三菱自、なぜ今インドネシアで大規模投資か 日系ひしめく市場でシェア拡大狙うが…

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とはいえ、シェア拡大はそう簡単でもなさそうだ。インドネシア政府は自動車の普及や環境負荷軽減を目的とした「ローコスト・グリーンカー(LCGC、低価格エコカー)」政策を、昨年から導入。小排気量で低燃費、現地調達の進んだ小型車が対象で、適合車は税金の減免が受けられる。トヨタ、ダイハツ、スズキ、ホンダ、日産の5社はすでにLCGCを発売済みだ。今年1~8月の累計販売台数では、このLCGCが全体の約1割強となる、11万3000台にまで拡大している(前年はほぼゼロ)。一方で三菱自動車としては、参入の計画がない。益子会長は「小型MPVの生産に注力するため、今回の新工場でLCGCを生産するという計画はない」としている。

経営再建が完了し、インドネシアなどへの積極投資も可能になった(写真はインドネシアで生産中の商用車「COLT T120SS」)

三菱自動車は2016年度までの中期経営計画の中で、東南アジアでの販売台数を39万台(13年度は24万3000台)まで伸ばすことを目標としている。タイにはすでに年産50万台規模の同社最大拠点があり、フィリピンでは100億円弱で買収した米フォード・モーターの旧工場に移転、15年1月から生産を始めて年間10万台規模を目指す。長年の懸案だった三菱グループの優先株式を全量処理し、経営再建期を脱したことで、積極的な投資が可能になった。

巨大な潜在需要

もっとも、インドネシア新工場は2017年の稼働なので、中期計画には織り込まれていない。ただその先を見据え、「持続的成長を実現するためのカギを握る最重要プロジェクト」(益子会長)として位置づけられている。現在同国の人口は約2.5億人で、自動車販売は前述の通り約110万台。他方、それより少ない約2億人の人口を抱えるブラジルの自動車市場は、2013年で約276万台。益子会長は「人口の割に総需要の規模はあまりにも小さい」と、インドネシア市場の潜在的な成長可能性に期待を込める。

持続的なシェア拡大を実現するには、新開発の小型MPVがインドネシアで発売される2017年までに、少なくとも現在のシェア約8%を維持する必要がある。しばらく、他社に対抗する“武器”に乏しい状況が続くが、どこまで踏ん張れるか。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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