中国の独禁強化で被る自動車メーカーの損得 消費者重視を打ち出したかに見えるが…。

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中国でのシェア上位はすべて海外ブランド。中国の現地ブランドはトータル40%前後だが、1社1社の実力は海外勢に及ばない。強いブランド力を持つ外資、特に独VWなどの価格が下がれば、ますます競争力は増す。仮に国内メーカーの支援が目的なら、逆に価格を引き上げさせるはず。その意味で当局は消費者重視を真剣に考え始めたのかもしれない。

ただし、異なる見方もある。「価格引き下げの範囲は小さい。影響もわずか」と断言するのは、ある日系自動車メーカーの中国担当役員だ。

価格引き下げの影響度

今年に入ってBMWは、3300点の部品の価格を平均15%引き下げ、8月にはさらに2000点を平均20%引き下げた。またレクサスは9月に1万5000点の価格を平均26%下げている。

これらの数値は一見大きく感じる。しかし、自動車1台は約3万点の部品で造られており、車種ごとの型番が違うため、メーカー全体の部品数は数十万から100万以上。そこから考えると、価格引き下げの対象範囲は限定的だ。しかも頻繁に売れる補修部品が含まれているかはわからない。車両価格引き下げも構造は同じで、一部車種に限られるうえ、従来の値引きの幅でしかない可能性も残る。

「中国当局は外資に価格を下げさせたとアピールできるし、メーカーは消費者重視の姿勢を示せる」。別の日系自動車メーカーの中国駐在員は皮肉な見方を披露する。政策の狙いを、外資たたきや、国内産業支援など一言で説明できるほど、中国は単純ではないようだ。

「週刊東洋経済」9月20日号<9月15日発売>掲載の「核心リポート02」を転載)

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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