ジョン・レノンがオノ・ヨーコと出会った運命の日 『ジョン・レノン 最後の3日間』Chapter32
個展の展示物の中には、200ポンドという値がつけられたリンゴもあった。
ひょっとしてこの女、有名人である僕の金を狙ってるのか? ジョンは一瞬、ひるんだ。
ヨーコはその後も、展示を見て歩くジョンの後をついてまわった。
「天井の絵(Ceiling Painting)」という作品の前で、ジョンは足を止めた。置いてある白い脚立を登り、虫眼鏡を手に取って、天井から下がっている小さなカードを覗き込む。
カードの真ん中には、とても小さな字で、「YES」という言葉が書いてあった。
ヨーコのポジティブなメッセージに、ジョンは微笑み、すっかり心を奪われた。
「素晴らしいと思ったよ」とジョンはのちに語っている。
「作品に込められたユーモアを、僕はすぐに理解したんだ」
ギャラリーを出たジョンは、妻の待つ家に帰った。その夜、ベッドで妻のシンシアの隣に身を横たえながら、ジョンはヨーコのことを考え続けていた。
不安定に彷徨い続ける心
波のように上がっては下がり、下がっては上がる感情に翻弄されながら、ジョンはアビイ・ロードの第2スタジオに入った。ときは、1966年11月24日。
彼はアコースティック・ギターを手に、ポール、ジョージ、リンゴの3人と、ジョージ・マーティン、レコーディング・エンジニアたちの前で、ようやく書き上がった新曲を歌ってみせた。