資産除去債務の襲撃、国際会計基準で外食業界は大混乱!

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 もっとも、同じ業態でも影響の度合いが分かれる事例もある。今期、日本マクドナルドホールディングスを抜き、売上高で業界トップに躍り出るゼンショーは、特損がわずか3億円にすぎない。牛丼店「すき家」が主力のゼンショーは、1店舗当たり敷地面積が小さく、そもそも費用がかかりにくいと言える。しかし、ライバルの松屋フーズは、店舗数がゼンショーの5分の1ながら、特損はさほど変わらず1・8億円の見込み。同じ牛丼チェーンでも、費用計上の考え方が大きく異なるのだ。

「どの店舗を資産除去債務の対象に含めるかや、対象店舗の営業年数なども、どのように見積もるかでバラツキが出るため、不公平感はぬぐえない」(大手外食チェーン幹部)。

見積もりの基準なし 解釈に大きなバラツキ

なぜこのような差が生まれるのか。問題は資産除去債務を認識する際、合理的な見積もりの“基準”が統一されていない、という点だ。

スタバが今回、見積もりの対象とした店舗は845(10年3月期末時点)の直営店全店。賃借物件の契約によって異なるが、店舗の退出時期が決まっている「定期借家契約」の場合、契約期間に応じて毎年の除去費用を配分した。退出時期を任意に選べる「普通借家契約」の場合は、撤退するまでの過去の営業年数を参考に平均値をはじき出した。

牛丼2社のケースは対照的だ。影響を軽く済ませたゼンショーでは、全3934店舗(ほぼ全店直営)のうち、3~4割に当たる定期借家契約の店舗のみを資産除去債務の対象としている。ほとんどすべてを対象にした松屋フーズと違い、普通借家契約の店舗に関しては、実は“対象外”としたわけだ(前ページ図)。

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