資産除去債務の襲撃、国際会計基準で外食業界は大混乱!
居酒屋「旬鮮酒場 天狗」などを展開するテンアライドのように、139店舗のうち138店舗が普通借家契約のため、資産除去債務の適用すら見送ったところもある。「閉める前提で出店をしているわけではないので、監査法人と協議して適用の必要はないと判断した」(玉置守・取締役経理部長)。
撤退時にかかる金額に関しても各社の判断はまちまちだ。特損1億円を見積もっていた焼き肉のさかいでは、「全店舗で(完全な原状復帰の)スケルトン返しを想定していたが、実際は退店の際、居抜きで他社に活用されることも多く、半分以下の額で済んだ」(中澤剛介・管理本部長)と、想定外の事態も起きている。当初の見積もりに変更があった場合、当該年度以降に分割計上されるが、見積もりのブレが大きければ本来の期間損益を歪めかねない。
そもそも資産除去債務は、12年に強制適用が判断される国際財務会計基準(IFRS)と、日本の会計基準の差異を縮小させる一環で定められた。IFRS自体が企業側の会計判断を尊重しており、「資産除去債務もストライクゾーンに収まればいい」(金融庁総務企画局の野村昭文・企業会計調整官)という見方が根強い。
とはいえ、資産除去債務は外食業界に限らず、小売店やガソリンスタンド、発電所まで、幅広い業種で適用される。このままでは企業があいまいな解釈の余地を逆手に取り、恣意的な運用をする可能性も残るだろう。新会計を導入したことで、かえって投資家が不利益を被っては意味がない。より実態を踏まえたルール作りが今こそ求められている。
(二階堂遼馬 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年8月7日号)
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