科学者が懸念「人類滅亡を招きかねない」2つの事 AIはいつ「シンギュラリティ」を迎えるのか

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実際に、身体を液体窒素で凍結させる会社がアメリカのアリゾナ州にありますが、それを実行する人は身勝手だと思います。もし蘇生が可能になったとして、そういう人は過去からの「難民のような存在」になり、自分がいた世界とは大きく異なる社会に負担をかけるかもしれないからです。しかも、そういう社会ではわれわれの価値観とは違って、ケアをしてくれるかどうかさえ、わからないのです。

新しい科学技術の誤用が招くカタストロフィ

―─『今世紀で人類は終わる?』で主張されたような、科学技術のエラーによる人類滅亡の可能性について現在、どのように思われていますか。さらに深刻化している?

『人類が進化する未来 世界の科学者が考えていること』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

われわれを完全に絶滅させるようなものはないと思います。たしかに歴史上、世界の一部で文明が崩壊したケースはいくつか存在しますので、今日のように世界がかつてないほど相互につながっている状況では、新しい科学技術の誤用がグローバルなカタストロフィを引き起こす可能性は高まっているといえます。より大きな影響が世界規模で起これば、ローカルなカタストロフィに留めることはできないでしょう。

別の危惧は、社会秩序の崩壊です。パンデミック(感染症の世界的大流行)が起きた場合、法を無視して裕福な人だけが病院で治療を受ける状態が生じるかもしれません(編注:取材時は新型コロナウイルスによるパンデミック発生前)。

またハッカーが悪事を働いて、東京やロンドン、アメリカ東海岸で配電網(電力網)がダウンすれば、数日以内にカオスが生じます。停電によって高層ビルのエレベーターが止まるだけではなく、コンピュータに関係するすべてのものが止まります。だからいまは、死傷者の数に関係なく、世界秩序の崩壊が起こる可能性が高いということです。

―─将来、どんなレベルの惨事が起きるかわからない。その意味で、現代人はつねに大きな不安にさらされているといえますね。

14世紀にヨーロッパでペストが大流行した際、多くの町で半分ほどの人口が死にましたが、現代社会ははるかに脆弱です。今世紀は「bumpy ride(揺れのひどい移動、険けわしい道のり)」になると思います。前述したように、カタストロフィはたった1回でも多すぎますから、事態は深刻です。

大野 和基 国際ジャーナリスト

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おおの・かずもと / Kazumoto Ohno

1955年、兵庫県生まれ。1955年生まれ。東京外国語大学卒業。米ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。生殖医療や、国際的な知識人への取材を行う。編著書に『未来を読む』『知の最先端』(以上、PHP新書)、『英語の品格』(ロッシェル・カップ氏との共著、インターナショナル新書)、『私の半分はどこから来たのか』(朝日新聞出版)、訳書に『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書)、『コロナ後の世界』(筑摩書房)『5000日後の世界』(PHP研究所)、など多数。

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