小田急「白いロマンスカー」VSE、早すぎる引退理由 「車体構造と機器の問題」、より具体的には?

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だが、そこから数年で状況が大きく変わったことになる。

小田急によると、VSEの補修・更新計画については数年前に検討を開始したが、その過程で車両の特性からリニューアルが難しいことが判明。その結果、最近になって更新を行わずに定期運行から離脱、引退させることを決めたという。

VSEについて、小田急の運転士経験者は「ときめくような、すごく特別感のある車両。運転士の中でも憧れる人は多かった」と語る。小田急のシンボル的な存在として君臨してきた車両だけに、引退を惜しむ声は鉄道ファンや沿線住民はもちろん、関係者の間でもやはり少なくないようだ。

代替の新車両は予定なし

VSEが定期運行を終えた翌日、2022年3月12日に実施するダイヤ改正では、特急ロマンスカーの運行体制が大きく変わる。

朝の通勤特急「モーニングウェイ」(記者撮影)

新ダイヤでは、朝の通勤用上り特急「モーニングウェイ」を3本増発する一方、平日は新宿―箱根湯本間の「はこね」「スーパーはこね」を上下計45本から30本へと大幅削減。土休日は51本から39本へ減らし、代わりに小田原までの列車である「さがみ」を増やす。

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以前からロマンスカーの利用者は観光より沿線の日常移動客が多数を占めているのが実情だったが、新ダイヤはさらに日常利用者向け特急の色彩が濃くなる。コロナ禍で鉄道利用者が減少する中でも「着席ニーズは強くロマンスカーの稼働率は高い」(小田急)といい、その状況を反映した形だ。

通勤利用などの利便性は向上しそうなロマンスカー。ただ、VSEで実施していた飲食のシートサービスが2016年に消え、コロナ禍の影響でやむをえない面があるとはいえ2021年3月には車内販売も終了するなど、ロマンスカーの「特別感」はやや薄れつつある。

「きょう、ロマンスカーで。」のキャッチコピーとともに、箱根観光をPRする広告などでロマンスカーのブランドイメージ向上に大きく貢献してきたVSE。引退後は展望席付き車種がGSEのみとなり、代替車両を新造する予定も今のところないという。「白いプリンス」の引退は、今後の箱根観光やロマンスカーのイメージ戦略にも影響してくるかもしれない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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