都心から1時間が決め手、東武「沿線開発」の勝算 東武動物公園や南栗橋の駅前で次々と進行中

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店舗内には地域イベントなどを行うためのレンタルスペースや地域情報を発信する案内所も設置した。さらに屋外の芝生広場の企画運営も無印良品が担当する。地域の人が集まる場所として自由に開放するほか、休日にはマルシェを開催したり、地元の学生による活動発表会を開催したりといったイベントもサポートしていく。

東武動物公園西口にはまだ開発されていないスペースも広がっている。「現在のところ、具体的な開発計画については決定していない」(東武)とのことだが、今回の商業施設のように、地域との共生を目指すものであることは間違いないはずだ。

南栗橋駅西口で進む大規模再開発の現場(記者撮影)

東武の沿線開発はほかの場所でも行われている。東武動物公園駅から東武日光線で3つ目の南栗橋駅。乗降人員は1日6625人と東武動物公園駅の同2万1468人と比べればさほど多くない。とはいえ、東武の車両基地がある関係からか多くの列車種別が停車する。しかも当駅を発車する列車はすべて始発であり、その多くが東京メトロ半蔵門線や日比谷線に乗り入れるため山手線の内側に座って通勤できる。鉄道の利便性は抜群によい。

その南栗橋の西口では久喜市、イオンリテール、トヨタホーム、東武および早稲田大学小野田弘士研究室による産官学5社連携による大規模な再開発事業が進行中だ。

今後の沿線開発、成功のカギは

駅西口から徒歩5分ほどの場所にある約16.7ヘクタール(16万7000平方メートル)という広大な土地に172戸の戸建て住宅や商業施設を開発する。東武とトヨタホームは住宅や街の核となるクラブハウスを建設するほか保育園やシニア施設を誘致する。イオンは商業施設を開設、久喜市は公園を整備、そして早稲田大学小野田研究室は自動運転による宅配の実証実験をはじめとした次世代モビリティシステムを導入し、住民の利便性向上を目指す。2022年5月の街開きが目標だ。

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同じ東武沿線の開発でも東武動物公園駅は地域住民の意向や自然環境との共生を図っているのに対して、南栗橋のこのエリアではまさにゼロから街を造り上げようとしている点で大きな違いがある。そういえば、ほかの鉄道会社では、小田急電鉄が下北沢で行っている再開発は小田急カラーを極力消して地域の意向に最大限配慮する「支援型開発」を標榜していた。

21世紀における沿線開発に「成功の方程式」はない。地域を徹底的にリサーチして実情に合わせたきめ細かな開発を行うことが成功のカギといえそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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