「安い日本」には観光立国化の道しかないのか 50年ぶりの円安から想像する日本と国民の未来
当時は大幅な円安相場を受けても、すでに海外生産移管を進めていた製造業においては輸出が大きく増えることはなく、「財」収支は増えなかった。だが、「サービス」収支に関しては旅行収支の大幅黒字化を軸として万年赤字から黒字化も散見されるような状況になった。いわゆるインバウンド(訪日外国人)からの外貨獲得であり、形は違えど、これも立派な輸出の1つである。アベノミクス下での円安が実体経済に直接的な影響を与えたのは、財輸出ではなく旅行収支を軸とするサービス輸出である。
観光立国という美辞麗句
パンデミックにより年間2兆円を超える旅行収支黒字が消失してしまったことは、これを当て込んでいた飲食・宿泊業などにとっては痛撃だった。だが、当時のインバウンドを支えた「約50年ぶりの円安水準」は今も健在である。パンデミックがなかったら、訪日外客数は過去最高を更新し続けていた可能性が高いだろう。
今回報じられたような製造業の国内生産回帰が本格化するのはまだ先だとしても、海外との往来が正常化されれば、「旅行収支黒字の拡大」という要請から「安い日本」の未来を「観光立国化」という美辞麗句で展望するような議論が騒がしくなるはずだ。
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