新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で打撃を受けた経済の浮揚を狙った刺激策は今年、株式や暗号資産(仮想通貨)、不動産など世界のあらゆる市場で投機をはらむ熱狂を生むきっかけとなった。だが中国は違う道を歩んだ。政府がバブル退治に動いたためだ。
その結果、主要市場間で近年まれに見る極めて大きな相違が生じた。中国株の指標MSCI中国指数の運用成績は世界株式を約36ポイント下回り、1998年以来の大きな乖離(かいり)となった。中国のドル建てジャンク(投機的格付け)債リターンは世界の高利回り債と比べ25ポイント低く、ここ10年余りで最大の差だ。ニューヨークのマンハッタンや英国、オーストラリアなどでは住宅価格が上昇したが、中国ではここ数カ月、値下がりが続く。
中国資産のこうしたバリュエーション低下がウォール街の貪欲さをかき立てている。特に中国政府は緩和に軸足を移しつつあり、ここ数カ月でゴールドマン・サックス・グループやブラックロック、UBSグループ、HSBCホールディングスが中国株の投資判断を「オーバーウエート」に引き上げた。
HSBCや野村など中国強気派増える-リスク警戒で距離置く向きも
JPモルガン・チェースのマルコ・コラノビッチ氏は今週、2022年の中国株に賭けるよう促し、MSCI中国指数が40%近く上昇すると予測した。
香港からフィデリティ・インターナショナルの中国スペシャルシチュエーション戦略を統括しているデール・ニコルズ氏は「こうした状況が通常、最も魅力的な機会を提供する期間であることを歴史が告げている」と指摘。「引き締めは、政策を緩める大きな余地を生む。明らかに不安定な時期だが、以前にもこうした時期はあり、今後も恐らく再び目にするだろう」と述べた。
こうした強気シナリオは、中国当局がハードランディングを防ぐため22年に景気支援に回るという期待に基づいている。それはまた、中国資産の評価を押し下げてきた、規制を通じた締め付けの緩和を意味する。中国人民銀行(中央銀行)の動きは今月の市中銀行向け流動性供給を通じ、そうした見方を強めることになっており、市中銀行が20年4月以来となる指標融資金利の引き下げを20日に明らかにするとの観測が浮上している。
政策に変化があれば、ポジションの薄い中国資産はすぐにも値上がりし得る。ゴールドマンのストラテジストによると、今年の極端な資金流出により、世界のアクティブファンドは中国オフショア株への割り当てがここ10年の最低水準付近となっている。グローバル株式ファンドに投資家が投じた資金が今年、過去19年間の合計よりも多かったことを踏まえると、特に対照的だ。
ただ、中国の金融市場を今年動揺させた要因の多くは残り、投資家は引き続き中国共産党の曖昧で予測不能な政策決定に翻弄(ほんろう)されることになる。
国際通貨基金(IMF)で中国を担当し、現在は米コーネル大学で教えるエスワール・プラサド氏は「中国成長の勢い鈍化と国内金融市場における最近のボラティリティーは中国政府が直面するジレンマを浮き彫りにしている」と分析。「市場志向の社会主義を装いこうした本質的に矛盾するインパルスを解決しようとする中国政府の試みは、必然的にさらなるつまずきとアクシデントにつながる」との見方だ。
JPモルガンの中国株担当チーフストラテジスト、ウェンディ・リウ氏はブルームバーグテレビジョンとの15日のインタビューで「相場が底を打とうとしていることが分かるだろう」と語った。「われわれはちょうど政策の谷に達した。従って、与信の谷と企業利益の谷を待っているところだ」という。
原題:China’s Bubble Bursting Has Wall Street Eyeing a 2022 Rally(抜粋)
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著者:Sofia Horta e Costa、Enda Curran
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