JR東海、在来線新型特急「HC85系」で何が変わる? 試験走行車として連日運行、64両を新造予定

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名古屋駅のホームに入ったHC85系。気動車特有のアイドリング音などはなく、電車同様に静かに出発を待つ(写真:村上悠太)

2019年12月にその姿を現した、JR東海の新型車両「HC85系」。非電化区間で運用されている「キハ85系」を置き換えるべく開発された同車は、JR東海で初となるハイブリッド方式を採用した。落成から今日まで各種性能試験を行う「試験走行車」として、各種試験を続けている。

ハイブリッド方式の鉄道車両は、JR東日本を筆頭にすでに営業運行されている車両も多く、JR東海は後発組だ。さらにHC85系は落成から3年近くも営業運転に投入されず、ひたすらに試験走行をこなしている形になるが、これには大きなわけがある。それはHC85系がハイブリッド方式車両では国内初の本格的な「特急形車両」として設計されたからだ。

「キ」ではなく「モ」の表記

鉄道車両におけるハイブリッド機構も基本的な概念は自動車のそれと同様で、液体燃料を用いるエンジンだけではなく、車載蓄電池とモーターを併用した駆動システムを持つ。HC85系は4両編成の各車に搭載されたエンジンによって発電機を回し、そこで生み出された電力と蓄電池の電力を適宜調節しながら併用し、モーターを駆動させて動力源としている。そのため、既存の気動車のようにエンジンの回転がそのまま車輪に伝わる構造ではなく、変速機や推進軸といった物理的に複雑な気動車特有の機構を省略することができ、メンテナンス面でも省力化が期待できる。

また、ブレーキ時にはモーターを発電機として利用する「回生ブレーキ」を使用することで蓄電池に電力をチャージし、車内サービス向けの電源やモーターを回す電力などに再利用される。こうした構造から、HC85系の車体には気動車を表す「キ」の表記はなく、「モ」と表記され、あくまで電車として区分されている。鉄道車両の運転に必要な動力車操縦者運転免許は気動車と電車で区分が異なるが、HC85系については気動車の運転士は電車の機構を、電車の運転士は気動車の機構を補完する教育を受ければ運転ができる。

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