JR東海、在来線新型特急「HC85系」で何が変わる? 試験走行車として連日運行、64両を新造予定

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蓄電池の充放電はただ単純にそれを繰り返せばよいというだけでなく、ちょうどわれわれが日常的に使用しているスマートフォンのバッテリーなどと同様に、常に充電し続けてしまうと蓄電池自体が短寿命になってしまい、本来目的としている環境性向上という面において問題が出る。これについては設計時の予想と実際の走行実績に予期せぬ差が生まれ、当初計画した寿命より短くなる恐れがあることがわかり、改良に改良を重ねた。

こうした過程を経てHC85系では、ハイブリッド方式を採用した車両では国内最速の時速120km運転を達成した(時速120km運転を行うのは、東海道本線名古屋―岐阜間、関西本線名古屋―河原田間の一部区間)。山岳部でも安定した走行性能を確保している。なお当初、CO2排出量についてはキハ85系に比べ約10%の削減を見込んでいたものの、試験走行を重ね、各種制御等を調整することで、約30%の削減を実現している。

高速走行時はパワフルなサウンド

実際にHC85系に乗車してみると、当然ながら既存のキハ85系と決定的に異なる点が多く見つかる。キハ85系ではホーム停車中でもエンジンをアイドリング駆動し続けるため、車内にはエンジンの駆動音や振動があり、ホーム上ではエンジン音に加え、気動車特有の排ガスのにおいなどがやや気になる。よりパワーの必要な出発時や高速走行時にはエンジンの唸りも一段とパワフルとなり、筆者のような鉄道ファンとしてはこのサウンドも魅力的ではありつつも、一般の乗客からしてみれば車内は静かに越したことはない。

これら気動車特有の要素がHC85系ではほぼ改善され、まさに電車のような佇まいになっている。停車中の車内の静寂性はもとより、加速中や高速走行中の騒音も気にならない。キハ85系では1両に2機のエンジンが搭載されていたが、HC85系ではエンジン自体も1機と、騒音源となるエンジンそのものの台数が減っていることも理由の1つだろう。モーター駆動なので加速中における変速時の衝動もない。

加えてHC85系では乗降ドアが開扉している際に、アイドリングストップする機構を搭載。ドアの開閉とアイドリングストップ動作が連動しているのにはちょっとしたわけがある。エンジン再始動後、最大出力が出せるようになるまで若干タイムラグがあるためだ。ドアを閉じたタイミングでエンジンを再始動し、実際に運転士が加速を始めるまでのわずかな間で駆動機関系を立ち上げ、出発時点では準備万端で最大出力が出せるようになっているのだ。

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