「客が置き去り」新規事業にありがちな3つの盲点 新規性があり適切に設計され、やりきれるか

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優れたビジネスモデルは、1つのストーリーとしても十分以上に面白い。そして、それまでの常識ではないものの、論理的には実行可能であるという驚きも含むものが多い。複雑なピースが組み合わさっていき、1つのビジネスモデルというストーリーを語っていく。成功している著名企業の創業時のストーリーが多く読まれるのはそういう理由だと考える。

多角化は一貫性が崩れやすい

一貫性が崩れやすいケースとして、多角化による新規事業開発がある。例えば、本稿で紹介した、日本のネットスーパーの黎明期の課題の原因は色々とあるが、その1つは、ネットスーパーはほとんどの場合既存のスーパーマーケット店舗を運営する事業主体であり、既存事業の主力顧客(時間をかけて買いまわることができる顧客層)を想定しつつ、別の顧客層(買い物の時間に制約がある顧客層)向けのビジネスを設計したことにある。価値提供が、食料品・日用品の買い物の時間を短縮することができる。

『PwC Strategy&のビジネスモデル・クリエイションー利益を生み出す戦略づくりの教科書』(中央経済社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

それにも関わらず、ケイパビリティとして配送機能として揃えたのは消費者の時間を拘束するようなサービスであった、ここに大きな矛盾があったのである。

現在主流になりつつあるサービスではそのような矛盾が解消され、さらに、配送時間をきめ細かく確認できるサービスの登場など対象顧客層のニーズを想定したビジネスへと進化しつつあるようである。

最後に、ビジネスモデルの実現においても柔軟、臨機応変であることは重要である。少しやってみる、起こったことを見つめて一歩引いて修正点を考える、これを繰り返す。これを繰り返しているうちに、気づいたら新規の事業が立ち上がっているはずである。

次回は、設計した「ビジネスモデルを実現しきれるか」についてご紹介したい。

唐木 明子 PwC コンサルティング合同会社 ストラテジーコンサルティング(Strategy&)パートナー

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からき あきこ / Akiko Karaki

東京大学法学部卒。コロンビア大学ロースクール修了(LL.M)。消費財、小売を中心に、金融、製造業その他幅広い業種のクライアント企業に対して、事業戦略、新規事業創出戦略、グローバル化などのテーマを中心に支援を率いる。JPモルガンで社内弁護士として金融自由化対応を担当した後に戦略コンサルタントに転身、マッキンゼー・アンド・カンパニーから郵政民営化準備企画及び日本郵政株式会社を経て、ブーズ・アンド・カンパニー(2014年にPwCに統合)に参画。

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