こうした背景もあり、企業からは3回目の実施に慎重な声も上がる。
前出のA社では、接種終了後も余剰ワクチンの返送や接種券の管理に手間を取られた。社内からの希望も少なく、3回目の接種は行わない方針だという。「同じ手順でもう一度というのは、とてもじゃないが考えられない」(前出の担当者)。
一方、自社やグループ会社の従業員など約4万6000人の接種を担った日本郵政は、3回目の実施を検討中だ。ただ前回、ワクチンの廃棄を出さずに大規模接種体制を整えるのに苦心した。
今回は自治体で1、2回目を受けた人が3回目を職域で受けることも可能とされている。官民の接種の動線が入り交じるが、各会場の予約・接種データは連携されていない。「ワクチンを効率よく使うため、官民共通の予約システムが提供されると助かる」(日本郵政の広報)。
企業ごとのワクチン確保量は「非開示」
「職域」での接種という枠組みをめぐっては、公平性を疑問視する声もあった。1、2回目の職域接種が始まった今夏は、多くの自治体で接種予約枠が瞬時に蒸発していた。大企業の従業員はワクチン接種ができた一方、中小・零細企業の従業員や自営業者などは地域の「予約争奪戦」に加わるしかなく、不満が募った。
生命・医療倫理に詳しい京都大学大学院の児玉聡准教授は、「今回の職域接種では、政策決定の根拠を公にし、人々が納得するのに十分な説明をする手続きが不足していた」と話す。
最終的にどの企業がどれくらいのワクチンを確保したのかも、企業側が任意で開示している情報以外明らかになっていない。記者が厚労省に、各企業に配分したワクチンの量について情報公開請求を行ったところ、「企業に対する誹謗中傷を防ぐため」という理由で、非開示とする決定が出た。
非常時の資源配分では効率を優先するあまり、公平性の確保が難しくなることがある。まずはきちんとした検証を行い、今後に生かす議論をする必要があるだろう。
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