元テスラの「天才エンジニア」が作った車のヤバさ 「モデルS」設計者が設立したルーシッドの凄み
2012年にテスラを辞めたのは、主にウェールズに住む病気の母親を介護するためだったとしながらも、ローリンソンはマスクから不当な扱いを受けていたと明かす。ただ、具体的な内容については言及を避けた。
気さくな印象を与えるローリンソンは、芯が強く、細かなことにも神経を行き渡らせるタイプだが、マスクと違って、でしゃばらない。自分より賢い人間を雇いたい、というローリンソンの言葉からも、彼の控え目な性格が浮かび上がる。
「私が(自分より賢い人を採用するという)仕事を正しくやり遂げたとしたら、その頃には自分が社内で最もとろい人間ということになっているはず」と言ってローリンソンは笑う。
ローリンソンの目的は金ではない
2007年にアティエヴァという名のバッテリーメーカーとして出発して以降、同社は何度も倒産の危機に見舞われてきた。2014年には事業内容をEV製造にシフトし、その2年後に社名をルーシッドに変更。自動車製造は資本集約的な事業であるため資金調達の苦労は続いたが、2018年にサウジアラビア公共投資基金からの10億ドルの出資に助けられて今日に至る。同基金は現在でも過半数を握る大株主だ。
「誰もが『スタートアップ企業にとって難しいのは量産化だ』と言う。私に言わせれば、倒産しないように資金を集めることの方が、ずっとたいへんだ」(ローリンソン)
ルーシッドの株価に連動したボーナスによって、ローリンソンはすでに富豪となったか、近々そうなる可能性が高い。だが、フォーミュラEの創設者兼会長のアレハンドロ・アガグは、ローリンソンは金目当てで仕事をしているのではないと話す。「彼を駆り立てているのは、最高の車をつくることだ」。
ルーシッドは生産台数を520台に限定した「エア・ドリームエディション」の納車を10月下旬から開始。間もなく「エア」の別の3モデルの生産と納車にも着手する予定だ。すでに完売したドリームエディションのパフォーマンスバージョンは1111馬力を誇り、航続距離を重視したバージョンは1回で520マイルの走行が可能となっている。これはアメリカ環境保護庁(EPA)がテストした車種の中で最長の航続距離だ。