来日26年で倒産も経験「シディーク社長」逆転人生

東京タワーにパキスタン料理店を出すまでに再起

再起の糸口となったのは、ミアンさんの夫人だった。同じパキスタン人で、小さな貿易会社を営んでいた。それが「和新トレーディング」だ。

この会社の名義で、「シディーク」がいくつか残っていた。加えて、新規に始めたパキスタンマンゴーの輸入が、軌道に乗ってきたのだ。それに、パキスタンのスパイス大手シャン・フーズからの輸入が伸びてきていた。

またセントラルキッチン時代の経験を活かして、ケバブやタンドリーチキンなどオリジナルブランドの冷凍食品の販売も始めて、これもヒットした。日本国内のイスラム教徒増加という波と、ミアンさんのビジネスが、やっとマッチしたのだ。日本人の間に、エスニックブーム、スパイスカレーのブームが起きていたことも後押しした。

「少しずつ業績がよくなり、『シディーク』も何軒か買い戻したんです」

木更津に自宅を移し、農業を始めた

そして自宅は、東京から千葉の木更津に移った。4人の子供たちは都内のインターナショナルスクールに通っていたのだが、その高額な学費が、傾いた家計にはきつかったからだ。

いくらか手ごろなインターナショナルスクールが木更津に見つかり、子供たちには転校させることになってしまったのだが、それでも引っ越してきてよかったと思っている。都内に比べて自然豊かなこの地で、農業を始めてみたのだ。「シディーク」で使う米や野菜をつくるためだったが、次第に面白くなってきた。

「土日は毎日6時から、田植えや稲刈りをしてるんです」

まわりの日本人の住民も、はじめは「ガイジンがなにをやっているのか」と訝しげだったようだ。それでもミアンさんから積極的にあいさつをし、黙々と土と格闘しているうちに、次第に様子が変わってきた。

「視線が、すごくやわらかくなってきたなって感じます。話しかけてくれる人がずいぶん増えました。でもまだまだ、私の溶け込む努力が足りないなって思うけど」

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