中国で「外資系ブランド」が岐路に立たされる訳 成長鈍化の中国・自動車市場で生き残るには?

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生産拠点の1本化で工場稼働率の向上や運営コストの低減につなげ、苦境を打開する構えであるが、広州汽車が広汽FCAの株式20%をステランティスに譲渡することを決定したことから、中国市場におけるFCA車販売の厳しさも伺える。

また、フランス・PSAは、2019年に長安汽車(チャンアン)との合弁企業である、長安PSA の株式を金融や不動産を主力事業とする宝能集団に売却し、傘下の神竜汽車工場の売却も検討しているという。

フランス・ルノーは、2020年に合弁企業の東風ルノーの株式を東風汽車に譲渡し、東風汽車との乗用車合弁事業から撤退した。また、2021年9月には、経営再建中の華晨汽車(ブリリアンス)との合弁商用車事業、華晨ルノー金杯の合弁解消を検討する動きも浮上している。

韓国系車が技術力で中国地場ブランド車に差を縮められている一方で、ブランド力で日系・ドイツ系車に及ばない状況だ。欧米車は、強みであるデザイン性やコンセプトだけでは差別化要素にならず、割高感のある価格はこうした外資系ブランド車の販売低迷の要因と言えるだろう。

目立つ三菱自動車とマツダの低迷

韓国系・フランス系に限らず、中国で好調が続いた日系ブランドも苦戦に追い込まれている。

三菱自動車が2021年4月、東南汽車の持ち分25.0%(3450万米ドル)を福州市の国有企業、福州交通建設投資集団に譲渡し、今後の中国事業を広汽三菱(広州汽車との合弁)に集中する。

広汽三菱が11月19日に発表した新型車「エアトレック」(写真:三菱自動車)

東南汽車(サウスイースト)は。1995年に福建汽車集団と台湾の中華汽車が折半出資して設立。2006年、中華汽車から持ち分25%の譲渡を受けた三菱自動車は、東南汽車の販売網を通じて「ランサー」や「ジンガー」を販売していた。

その後、東南汽車で「ギャランフォルティス」を「ランサーEX」の名で生産していたものの、販売台数は振るわず、2018年に生産中止。一方、主力の合弁企業、広汽三菱の販売台数は、新車市場の減速やSUV分野の競争激化等を受け、2020年には前年比43%減となる7.5万台まで落ち込んだ。

これは、ピークだった2018年(14.4万台)の約5割という数字。さらに、2021年1~10月には前年同期比6.8%減の5.1万台となっている。

マツダの中国現地生産は、合弁会社の長安マツダと、第一汽車への委託生産及び一汽マツダの自動車販売で進められてきた。中国におけるマツダの販売台数を見てみると、2013年の18.6万台に対し、2017年は31.6万台と増加している。

しかし、その後は景気減速や新車需要の低迷を受け、停滞。2020年は前年比5.7%減の21.5万台と、3年連続で減少した。

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