5度の事故で問われる新日鉄住金の安全文化 会社は老朽化を否定、いったい何が原因なのか
すでに1月に2回、さらに6月と7月の計4回、電気系統のトラブルが発生し、製鉄所が停電。コークス炉内の一酸化炭素ガスを燃やしたことで、製鉄所周辺は大量の黒煙に包まれた。
操業度の低下や設備の補修などで、すでにわかっているだけで合計180億円を超える損失が発生している。地元自治体からも再発防止策を取るよう強い要請を受け、8月8日に外部の有識者が参画する事故対策委員会を立ち上げたばかりだった。
1年も経たないうちに5度の設備トラブルが起きたこともあり、会見での報道陣の質問は過去の設備トラブルとの関連性に集中した。一部の記者が「製造設備の老朽化やベテランの現場担当者が退職したことで、技能伝承がうまく行われていないのではないか」と指摘する場面もあったが、酒本所長は明言を避けた。
「原因は老朽化ではない」
名古屋製鉄所には4基のコークス炉がある。今回の事故が発生したのは、このうち1964年に名古屋製鉄所の高炉が稼働したときから存在する最古のコークス炉。ただ、会社側は「設備の改修は適宜行っている」としており、必ずしも老朽化だけが原因ではないとの見解だ。
実際、同社のある幹部は、今回の事故が発生する前ではあるが、過去の4回のトラブルについて「製鉄所の電気システムは最新のもの。高炉の建屋などは確かに古いが、ほかの設備はどんどん更新している。事故の原因は老朽化ではない」と説明していた。
「ご安全に」――。新日鉄住金の各製鉄所では日々のあいさつとして、こんな言葉を掛け合う。だが、そこに気持ちはどれだけこもっていたのか。掛け声ではなく、5度にわたった設備トラブルをしっかり検証することが、同社の安全文化醸成に必要な作業であるはずだ。
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