「親が学費負担放棄」学生を絶望させる新たな貧困 家は裕福でも自力で生計、統計では見えない実態

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大学受験直前に父親が大企業をリストラされた見城達也さん(仮名、22)のケースを見ていこう。達也さんは東京の有名私立大学4年生。高校3年のときに父親のリストラがあり、そこから家庭の状況が変わったという。

「一人息子だったので、親は貯金を切り崩して学費を払ってくれていました。でもコロナになって、大学学費はとても捻出できない、限界だって。不可能だってことに。まして、大学院進学なんてとんでもないって。じゃあ、僕が働くってなって朝から晩までバイトです。そうしたら勉強が追いつかなくなった。就職するにしろ、進学するにしろ、宙ぶらりんです」

「元々、僕は一橋大学、できれば東京大学を目指していました。合格率は五分五分でした。ダメだったら浪人するつもりでした。でも、受験直前に父親のリストラが決まって、とにかくどこでもいいから現役で入学してくれって。学費は親に払ってもらって。3年生までは日本学生支援機構の第一種奨学金と、塾講師のバイトで7万円くらい稼いで、なんとかなっていました。ただ、もう学費も払えないって」

久しぶりに帰った実家はまったく違う風景に

大学3年の年末、達也さんは帰省した。久しぶりに帰った実家は、高校のころとはまったく違う風景だった。父親の再就職はなく、高速道路の料金所の仕事をしていた。専業主婦で働いたことがない母親は、宅急便の配達の仕事を始めていた。低賃金労働する両親の姿を眺めて、実家の厳しい現実に気づくことになった。

「ずっと大学院に行こうと思っていました。けど、進学どころか、学部の学費を払うのも厳しい。僕には高校までのそれなりに裕福だった実家の記憶しかなくて、カツカツな親を見たことなかった。新聞をとらなくなっていていたし、家を担保にだして融資とか。両親は青い顔してずっとお金の話をして、この家も売るかもしれないみたいな。両親は、僕の東京の大学生活のために生きている、本当に申し訳ないと思いました」

達也さんは今、アルバイト漬けであり、眠る時間もないほどのスケジュールをこなす。「キツイし、ツラいです。愚痴になるけど、本当にキツイ。でも、やるしかないのでやっています」と、涙目になりながら語った。

親が学費や奨学金を奪ってしまうケースもある。坂井麗奈さん(仮名、24歳)は短大卒、社会人4年目。奨学金返済という名目で、短大2年のときから毎月給与の6割程度(10万円~13万円)を母親に請求されて渡している。母親にはヒステリーがあり、怖いという。その大きな金額に疑問を抱いても、麗奈さんは何も言わないで従っていた。

「お金のことは詳しくはわからないけど、母は奨学金をフルで借りたみたい。私が高校3年のとき、母は奨学金の制度を知って急に態度が変わった。ずっと進学なんて無駄遣いって反対されたけど、急に進学しなさいみたいな感じになりました。

それからヨイショヨイショ、行け行けみたいな。それで入学したら、『学費がたけ~んだよ、お前のところは』と怒鳴るようになった」

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