日本人に大災害より確実に「人生大転機」が来る訳 「震災復興とライフシフト」で考えるレール人生

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2つ目は、世代である。寿命の延びによって、いくつもの世代が同時代に共存することになった。世代間の対立は日本だけでなく、世界中のトレンドだ。著者は、Z世代のようにレッテルを貼るのは星占いのようなもので、有害だと指摘する。パートナー間でキャリアをケアするように、世代間で互いの人生を共感しあうことが必要だと説いている。

3つ目は、コミュニティである。新しいキャリアを歩むには、新しい仲間が必要になる。今の仕事や生活を変えていくうえで、新しいコミュニティと接していくことの重要性は増している。住んでいる地域や趣味などのコミュニティで、仕事では出会えない出会いを重ね続ける必要がある。

福島移住の責任者を務めることになった際に、政府や福島県の50~60代の関係者に相談し、お世話になった。また20~30代の若いメンバーに支えられて、目の前の実務が成り立っている。

私は46歳だが、同年代は各界でリーダーになっていて、時々愚痴を聞いてくれるものの、共に行動することは少なくなった。新しいチャレンジを行う時には、信頼できる上の世代と下の世代が必ず必要だと実感している。

なにかの目的を達成するための手段として人と付き合っても、信頼は生まれない。幅広く人間関係を深め続けてきたかどうかが、次のチャレンジに向けた跳躍を支えてくれる。

政治は、個人のライフ・シフトを支えることができるか

本著の副題は「100年時代の行動戦略』だが、私は『人生100年時代の国家戦略』という本を2017年に執筆した。私は、小泉進次郎議員を筆頭とした自民党若手議員20人による会議のオブザーバーだったが、ここでの500日にわたる議論の経緯を一冊にまとめたものだった。

この会議でのキーワードは「レールからの解放』だ。20年学び、40年働き、20年休むという人生のレールを壊し、何度でもチャレンジし、何度でも学び直せる22世紀を見据えた新しい社会モデルを、この会議では構想していた。

結果的にだが、『ライフ・シフト』の問題意識に極めて近い提言となった。この議論は当時の安倍政権にも取り入れられ、2017年9月には政府が「人生100年時代構想会議」を設置。リンダ・グラットン氏もメンバーに選ばれている。高齢化が世界でも最も進む国だからこそ、若手議員から政府まで、ライフ・シフトは大いに注目されている。

本作の中でも、個々人がライフ・シフトを進めるうえでの政府の役割について2つ言及されている。

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