新・ゆうパックの失態、34万個「大遅配」の顛末

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
新・ゆうパックの失態、34万個「大遅配」の顛末

「ペリカン便」を吸収し、7月1日に新たなスタートを切った郵便事業会社(日本郵便)の宅配便「ゆうパック」。だが発足初日から、大量遅配が発生する大失態を犯した。15日に「正常化宣言」を出したものの、船出早々の大トラブルは、ブランドを大きく傷つけてしまった。

今回の大混乱の原因は、単に統合の準備不足だけではない。ペリカン便の吸収の仕方にも問題があった。

ゆうパックとペリカン便は事業統合を前提に、「JPエクスプレス(JPEX)」を2008年に設立。日通は09年4月にペリカン便をJPEXに譲渡した。その半年後にゆうパックが合流するのを待ったが、民主党政権の誕生で頓挫。政権交代後に就任した齋藤次郎社長は、JPEXの日本郵便への事業吸収・会社清算を決めた。

だがJPEXは、深刻な赤字体質を抱えていた。月間50億~60億円の損失が発生し、6月末までの累積赤字は983億円。日本郵便への吸収を決めた当初は「サービスレベルの維持」をうたっていたが、実際に事業吸収する過程でコスト抑制が優先された。

09年度のゆうパックの宅配便取扱実績は2.64億個で、ペリカン便が1.92億個。単純合算で荷物は72%増えるが、集配拠点は1拠点増の70拠点、社員数も9000人増の26.1万人とほぼ横ばいに抑えた。JPEXからは7400人中、5700人が移ったが、このうち2割強は日通からの出向扱い。これでは士気が上がりようもない。

さらにカネのかかるシステム統合は見送り、両社のシステムを併走させた。50弱あったペリカン便の集配拠点のうち、ゆうパックに継承されたのは21拠点にとどまる。

宅配便業界は、首位のヤマト運輸と2位の佐川急便が8割弱を握る寡占状態にあり、足元のシェアも伸びている。一方、ペリカン便は09年度にシェアを10%から6%へ落とし、ゆうパックもシェア8%台で苦戦を強いられているのが実態だ。

早急に業務を見直し、正確に荷物を届ける“最低限のサービス水準”の確保が急がれる。百貨店など大口顧客の流出を穴埋めするため、不採算荷物獲得の悪循環に陥ると、大出血を招きかねない。

(週刊東洋経済2010年7月17日号)

山田 雄一郎 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事