スバル、新型「WRX」で国内反撃

国内専用モデル「S4」が象徴する方針転換

直噴ターボエンジンを搭載する

S4とSTIの月販目標を合わせると650台。年間では7800台であり、WRXシリーズ自体は、決して量販のモデルとはいえない。ただ、これまで熱心な車ファンに向けて開発してきた同シリーズに、「S4」のような車が加わったところには、富士重の方針の変化が窺える。

変化の理由の1つには、車に個性を求める顧客層が厚くなってきたことがある。これを端的に表しているのが、近年の輸入車人気だ。2013年の登録車に占めるシェアは8.6%と、過去最高を記録した。価格帯や車種構成が比較的近い、アウディやBMWなどドイツメーカーも、日本での販売を順調に伸ばしている。「最近の日本のセダンに走りの楽しさが足りないと思う人たちが、輸入車に乗り換えている。そういう層に楽しさのある”味の濃い”車として提供したい」(高津氏)。

国内の自動車市場では、今や軽自動車やコンパクトカーが主流だ。ただでさえ縮小傾向の国内で富士重のようなメーカーが生き残りを考え、コアなスポーツカーの位置づけだったWRXの間口を広げることにつながったのだろう。

日本専用車が出てきた背景

もう1つ、そうした変化の裏にあるのは、往年の名車「レガシィ」の存在だ。ピーク時の1994年度には、国内で年間9万台強を販売する人気車種だったレガシィは、2009年のモデルチェンジ以降の販売が芳しくなかった。昨年度は1万9800台にまで減少。なぜなら、今や富士重の稼ぎ頭でもある、米国市場に向いた開発方針へと転換されたからだ。米国人の好みに合わせた大型化である。日本のユーザーからは「大きすぎる」との声が相次いだ。

その後は米国事業が急成長し、十分な開発費を捻出できるだけの利益も出した。この開発費がつぎ込まれたのが、大型化したレガシィに代わる“日本専用”のモデルである。まず、昨年11月の東京モーターショーで発表されたのが、冒頭に述べた新型レヴォーグ。そして今回のWRX S4だ。実はこの両車種は、ほぼ同時に開発が始まった。「従来レガシィに乗っていた人が、次のレガシィに乗り換えようとしたが、大型化してしまった。そこで(1まわり小さい)『インプレッサ』サイズのカテゴリーを出発点として新車を作り上げたかった」(日月氏)。

実際、レヴォーグとS4には、非常に多くの共通点がある。まずエンジン。レヴォーグの2リッターモデルとS4は、同じ直噴ターボエンジンとトランスミッションを積んでいる。馬力やトルク、そして燃費まで、数値は一致する。さらにいうと、価格も同じなのだ。「出発点に同じ車を持つ商品は、その価値も同じようなところにあると考えた」と日月氏は説明する。

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