JRはなぜ自前の発電所や変電所を持っているのか 電車を動かす鉄道会社は大量の電気を使用する

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今回の火災では、トランスとその周辺のみの損傷で、健全な片側だけを用いて送電すれば問題は少ないように見える。だが、それは「コロンブスの卵」のようなもので、被害状況が刻々と変わる中で、安全にバイパス送電ができるように対処するのは至難の業となるだろう。

被害状況の確認と仮送電を同時並行で行い、電気の容量を考慮しながら作業時の安全に配慮しなければならない。あとは、JRのような巨大組織ならではの問題で、各部署との連携・コミュニケーションにも膨大な手間を費やしてしまうゆえに、仮復旧ですら長時間を要してしまう。

電車の側でできること

とは言え、乗客としては仮復旧まで2~3時間も列車の中で待たされるのは、たまったものではない。現状では、停電になると列車のトイレも使えなくなる(トイレが電気で動くため)始末で、改善の余地があるだろう。

今回の変電所の不具合も含め、列車に電気を送る設備で不具合が生じる事態はよくあるものだ。春先の強風で架線にビニールが引っかかる、カラスが巣を作って架線の設備をショートさせる、変電所に動物が侵入して設備が壊れるなど、枚挙にいとまがない。

最新の電車では非常脱出用のバッテリーを搭載した車両があり、JR東日本の車両でも横須賀・総武快速線の新形車両には搭載されている。停電があった場合、このバッテリーを蓄えた電気で近くの駅まで避難ができるというものだ。

今回のように、JR東日本の場合は運行支障が起きた場合の影響が大きく、今後の新型車両は非常脱出用のバッテリーを標準装備としてよさそうにも思える。これと合わせて、バイパス送電の簡略化など、短時間で仮復旧が可能な体制ができると利用者としてはありがたい。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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