JRはなぜ自前の発電所や変電所を持っているのか 電車を動かす鉄道会社は大量の電気を使用する
今回、火災事故があった蕨交流変電所は「基幹変電所」と呼ばれている。だが、「基幹変電所」と言われても、さっぱりわからないのではないだろうか。
そもそも「変電所」とは何か。それは受け取った電気を使いやすい電気に変換する場所だ。電気を変換する場所だから変電所という。「交流」は電気の種類なので省くが、基幹変電所とは何かというと、蕨交流変電所の場合は東京電力から購入した電気を最初に受ける場所となる。
蕨交流変電所は、東京電力から受けた電気を周辺の小規模な変電所に供給するのが主な仕事で、電気を「まとめ買い」する窓口とも言える。さらに、蕨交流変電所から周辺にある小規模な変電所に電気を送り、それらの変電所で電気が変換されて周辺の各駅や電車などに電気が供給される仕組みになっている。一見ややこしいが、電気を使用する場所の近くで用意することにより、質のよい電気を供給することができる。
今回の火災があった蕨交流変電所は、各変電所に電気を送る中枢・基幹の機能があった。東京電力から購入した電気を変換するトランス(変圧器)が壊れて発火したために、周辺の変電所に電気が供給できなくなり、広い範囲で停電してしまった。
ここでトランスという言葉が出たが、これは変電所では要の設備で、電気の強さ(電圧)を変換するものだ。大きな電力を遠くに送電する場合、電圧を上げて強い電気にして送ると送電時の損失が少ない。だが、強い電気は近づいただけで感電するような危険なものでもあり、蕨交流変電所では周辺の変電所に電気を配りつつ、使いやすいように電気の強さを弱める役割も持たせているのだ。
JR東日本が持っている発電所
変電所の話とは異なるが、JR東日本は自前の発電所を持っていることで知られている。川崎地区に火力発電所、新潟の小千谷地区に水力発電所を備えているのだが、実際にはこれらの発電所でJR東日本が使用する電力のすべてを賄うことはなく、東京電力などの沿線の電力会社から購入した電気も使われている。
今回の火災では、周辺の変電所から電気を融通して仮復旧としているが、普段の電力供給では、電力会社から購入した電気と自前で発電した電気を使い分けている。イメージとしては、購入した電気はAのエリアで、発電した電気はBのエリアで使うといった具合だ。
今回の火災では停電が広範囲に及んだが、JR東日本の広いエリアから見れば一部の地域で、地域によって使い分けが行われていることがわかるだろう。
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