バイデン氏「対中貿易政策」があまりに残念なワケ トランプ政権時代から変わったことは何か
「バイデン政権の政策は、少なくとも短期的には、トランプ時代からの第1段階の合意を実行することだというのが私の結論だ」と、首都ワシントンの戦略国際問題研究所で行われたタイ氏の演説を主催した元通商政策専門家のウィリアム・ラインシュ氏は話す。
「バイデン政権の対中政策に関して私が最もよく受ける質問は『トランプ政権の政策とはどう違うか』というもので、これは皮肉なことだ。大差ない、というのが現時点での答えになるようだ」
通商政策より、産業政策
バイデン政権は明らかにアメリカ内の深い政治的分断に縛られ、インフラと社会福祉関連の支出を加速させる法案を可決させることに注力している。対中強硬路線は超党派でいくらか合意が得られている数少ない論点の1つで、バイデン氏は中国との競争の必要性を国内政策議題の主要な推進力として利用してきた。タイ氏の演説は産業政策が通商政策に置き換えられる政策転換が前政権時代に始まり、今なお続いているという感覚を伝えるものだった。
「バイデン氏にとっての問題は、中国と何を交渉するかではない。中国の通商・産業政策が変わらないことは明らかだからだ」と、最新の著書が中国との覇権争いに関する内容であったプレストウィッツ氏は語る。「そのため、問題はアメリカ自身をどうするのか、ということになる。インフラ強化を狙い上院で可決されたCHIPS法(半導体製造支援法)はその一端だ」。
同盟国・パートナー国との取り組みに基づいた世界貿易戦略はおろか地域貿易戦略に関する話も欠如していたことは一部の観察者にとって特に気になった点だ。通商政策に関するタイ氏の演説で、「非市場的慣習」と戦うための米国・EU貿易・技術評議会におけるヨーロッパ同盟国との協力については軽く触れた一方、ITセキュリティおよびサプライチェーンマネジメントの課題に関する日本や韓国などとの協力については言及がなかった。
代わりに、国内の産業競争力強化、および鉄鋼・太陽光パネル等の産業の外国の競合からの保護に重点が置かれた。「アメリカ通商代表部の話の大半はトランプ政権の管理貿易路線の継続に関するもので、買い取り約束が差別的なためアメリカと同盟国との間の結束を損ねるものだ」と、ブルッキングス研究所東アジア政策研究・日本研究センターを率いるソリス氏は語る。
幸い、ツイッターに突き動かされるトランプ前大統領の通商政策の突飛で衝動的なあり方は過去のものとなったが、関税を主要なツールとして利用する手法は今も引き継がれている。そしてこの手法は同盟国に対しても用いられる。バイデン政権は鋼鉄・アルミニウムの輸入関税はまだ撤廃せず、国家の安全保障を脅かすとしてそれらの輸入を規制する第232条の発動に異議を唱えてもいない。
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