日本だけが「低賃金から抜け出せない」2つの理由 「アベノミクスは成功した」と言うけれど……

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日本では、中小企業・地方企業・サービス業の賃金が低いことが知られています。また、労働者に占める低賃金の非正規労働者の割合が高いことが指摘されています。男女の賃金格差も問題です。賃金水準を上げるには、マクロ経済を改善するだけは不十分で、こうした構造問題の解決にも取り組む必要があります。

「中小企業の温存」が賃金水準を押し下げ

賃金上昇を阻む一つ目の構造問題は、中小企業です。

企業規模別の賃金(月額)は、男性では、大企業377.1千円、中企業331.7千円、小企業302.4千円、女性では、大企業266.4千円、中企業253.1千円、小企業232.9千円です。

大企業=100とした企業規模間賃金格差は、男性で、中企業88.0、小企業80.2、女性で、中企業95.0、小企業87.4です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2020年)。

中小企業の賃金が低いのは、世界的に珍しくありません。中小企業では規模の経済(生産量が増えると単位当たりのコストが低下する効果)が働かないので生産性が低いからです。ただ日本で特徴的なのは、生産性の低い中小企業がなかなか淘汰されず、存続することです。

2008年のリーマンショックを受けて倒産の危機に瀕する中小企業を資金面で支援するため、民主党政権が金融円滑化法を制定しました。そして危機が去り、自民党政権に代わった後も、手を変え品を変え、今日に至るまで倒産防止のための政策支援が延々と続けられています。

また、企業への課税の主力である法人税が資本金・従業員数などに基づく外形標準課税ではないため、赤字だと税負担がほとんどないことも、限界的な中小企業を延命させる一因になっています。法人全体に占める赤字法人の割合は、なんと65.4%(国税庁、2019年集計)に達しています。

赤字で事業を継続するのがやっとという中小企業が、満足な賃上げをできるはずがありません。賃金水準を上げるには、思い切った中小企業の構造改革、端的に言うと「限界的な中小企業の淘汰」が必須なのです。

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