地下鉄新線「豊住線」東京メトロにもう一つの利点 利用者の利便性だけでなく運行、保守にも貢献

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一方、有楽町線の新木場には、多くの車両を留置できる車両基地があるので、豊住線経由で新木場へ回送して待機させ、復旧後すぐに車両運用を回復させることも可能となる。

また、東京メトロでは、車両が誕生から20年ほど経つと、大規模なリニューアル工事を新木場の工場で行う。千代田線、有楽町線、南北線は地下で繋がっているのでスムーズに新木場にいたるが、半蔵門線と日比谷線は東急各線を経由し、南北線と有楽町線の連絡線を使わなくてはならない。豊住線があれば、複雑なルートを通らなくても済むわけだ。

ただし、東西線だけは、JR線としか繋がっていないため、深川の工場でリニューアル工事を行っている。しかしこれも豊住線で解消できるかもしれない。

豊住線は東西線の東陽町にも接続駅を設置することを想定しており、東西線の東陽町駅といえば、東西線用の車両基地である深川車両基地の最寄りだ。豊住線の東陽町駅は四ツ目通りの下にできると思われるので、東西線の駅とはちょうど十字に重なることになる。ここに、豊住線と東西線を繋ぐ連絡線を建設できるとなれば、東西線との共有も可能である。

つまり豊住線は、東陽町駅付近で東西線との連絡線を設置することで、銀座線と丸ノ内線以外、すべての東京メトロ線と、連絡線を通じて繋がることになる。これは東京メトロにとって、プラスにならないわけがない。理論的には直通先の他社線において、新車導入や甲種回送も東京メトロを通じて行うことができ、彼らにとって新たなビジネスチャンスとも言えるだろう。

牽引車両が不要になる

特に、東武鉄道にはメリットが多そうだ。東上線とスカイツリーラインの両線は直接線路が繋がっていないため、現在は、車両の共有をするために、東上線の寄居駅から秩父鉄道を経由して、伊勢崎線の羽生駅を貨物列車として輸送されている。その際、以前は秩父鉄道の保安装置を搭載した車両に牽引されて行われる方法がとられていたが、現在は秩父鉄道の機関車で牽引されることが多い。

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豊住線を活用して東京メトロ線内で車両のやりくりも可能になり、さらに元々地下鉄直通車として製造された9000系や50050型の場合は、牽引車両が必要なく、自走(回送列車)で運転できる。

今後の新型車両の搬入も伊勢崎線側でJR線から車両の搬入を行い、南栗橋の車両基地で検査を行い、自走で豊住線を経由して東上線に送り込むことができる。現在の秩父鉄道を経由して行う方法よりは、距離的にも運用的にも東武鉄道にとって、コストの削減が図れるのではないかと思う。

現在東京メトロは、神奈川、埼玉、千葉の3県と首都圏を結ぶ多くの路線で相互乗り入れを行っている。まるで毛細血管が心臓部に集まるような姿をしているが、肝心の心臓部では線路が繋がっていない路線がある、豊住線はその部分の解消に重要な役割を果たす可能性を秘めており、今後の展開が気になるところだ。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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