原油価格、7年ぶり1バレル=100ドル台はあるのか ハリケーン後遺症+需給逼迫要因が目白押し
実をいうと、ハリケーンの上陸後からここまでは、アメリカ内の石油需給はそれほど一気に逼迫したわけではなかった。というのも、直撃を受けてルイジアナ州を中心に、広範囲にわたって発生した停電によって製油所も稼働を停止せざるをえなくなり、その分製油所で消費(精製)される原油の量も大幅に減少したことがその背景にある。
アメリカのエネルギー省エネルギー情報局(EIA)のデータによると、上陸直後の9月3日までの1週間の国内原油生産は日量1000万バレルと、前週からは150万バレル減少したものの、一方で製油所稼働率は前週の91.3%から81.9%にまで急低下。製油所における原油の消費量は170万バレルと、生産よりも大きく落ち込む格好となっていたのだ。
翌9月10日までの週には生産が日量で10万バレル回復したいっぽう、製油所における消費は4万バレルしか増加せず、需給はむしろやや緩んでいたということになる。
春以降、需要の回復に伴って需給は逼迫状態が継続
だが、ここへきて状況は一気に変わってきたようだ。その翌週、9月17日までの週には生産が50万バレル回復したいっぽう、製油所における消費量はそれを大きく上回る98万バレルの増加となっており、需給バランスは一気に逆転してきた。
現時点で依然として停止しているメキシコ湾の石油生産は、施設の損傷が激しかった可能性が高く、生産停止のさらなる長期化も十分ありうる。製油所の稼働停止はおもに電力供給に関する問題によるものであり、ハリケーン後にガソリンなどの生産が大幅に落ち込んだ分を取り戻すため、この先一段と稼働率が上昇、原油の消費が増える可能性は高い。ハリケーンによる供給不安や需給の逼迫が相場に影響を及ぼすのは、むしろこれからが本番となるのかもしれない。
だが、ハリケーンの影響を除いても、実は、これから一段と相場が上昇する条件が整いつつある。「ハリケーンの上陸後は製油所のおける消費の落ち込みにより、需給はそれほど逼迫したわけではなかった」と書いたが、それはあくまでも石油生産と、製油所における消費という、原油に関しての部分の話である。
一般家庭などの小売りレベルにおける、ガソリンやディーゼル燃料、暖房油などの需要は、ハリケーンの被害を受けなかった地域を中心に高止まりを続けたことから、全体でみれば需給はやはり逼迫、在庫も取り崩しが大きく進む格好となった。
もっと言えば、需給は新型コロナのワクチンの接種が進み、景気は急速に回復してきた今年の春以降、慢性的に逼迫状態にある。アメリカ内の在庫は今年の4月以降の平均で、原油だけなら週平均351万バレル、原油の石油製品の合計でも273万バレルというかなりのハイペースで取り崩しが続いている。4月には50ドル近辺にあった価格が、夏には70ドル台半ばまで上昇したのも、当然の流れだ。
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