ロンドン地下鉄、延伸の背景に「ある施設」の影響 沿線に「空中プール」も出現、007の舞台になる?

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地下鉄延伸には再開発以外の背景もある。新駅のひとつ、ナイン・エルムズの隣接地にアメリカ大使館の移転が決まっていたことだ。

同大使館はもともと、ロンドン中心部の高級住宅街、メイフェア(Mayfair)の一角にあったが、ジョージ・W・ブッシュ元大統領が任期中の2008年秋、ナイン・エルムズへの移転を表明。翌年にビルの建設が承認された。2001年に起きた同時多発テロ以来、アメリカの在外公館はテロ行為へのリスクにさらされてきたが、旧大使館周辺地域では警備強化による住民からの非難もあり、まったく新しい再開発地区への移転を決めた。

アメリカ大使館の移転に際して課題となったのは、再開発地区と市内中心部を接続する交通インフラの整備だった。そこで計画されたのが、地元自治体による財政負担が伴うケニントン駅からナイン・エルムズ地域までのノーザン・ライン延伸だった。大使館の移転に加え、バタシー発電所跡の再開発が進めば住宅地としての魅力が高まる。地元のワンズワース(Wandsworth)行政区も、以前から周辺開発のテコ入れのために地下鉄延伸を待ち望んでいた。

開発がすべて完成すると、2万軒もの新規住宅、2万5000人分の新規雇用が生まれることとなる。延伸区間のランベス(Lambeth)、ワンズワース両行政区にとって、この地域から徴収できる住民税(カウンシルタックス)収入は長期にわたって新たな財源となる。こうした背景もあり、両行政区は延伸のための資金拠出を決めた。

「空中プール」のタワマン街が出現

新しいアメリカ大使館の建物は「情報局秘密情報部(MI6)本部」の徒歩圏内にある。MI6といえば、かの『007シリーズ』主人公の諜報部員、ジェームズ・ボンドが所属していることになっているあの機関だ。

2棟のマンション間にあるシースルーのプール。ここを泳ぐのはどんな気分だろうか(筆者撮影)
伝統あるロンドンの街並みとは大きく異なる再開発地域の新市街(筆者撮影)

また、大使館の目の前には、いかにも外交官向けといえそうなエンバシー・ガーデン(Embassy Garden)と呼ばれるタワーマンション群が竣工した。大使館のビルより背の高いタワマンが周辺にあることにも驚くが、さらに衝撃的なのは、2棟を結ぶ透明な屋外プールだ。10階に相当する高さで、プールが空中にかかっている部分は14mあるという。こうしたプールは世界初というが、いずれ007シリーズ新作のロケにでも使われることになるだろうか。

これまでまるで廃墟だったこのエリアにタワマン群が出現する風景は「人々が知っているロンドンの様子」とは大きく異なり、かつての伝統ある街並みとはまったく別の新市街が生まれようとしている。

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