そろり再開? 動き出す企業買収ファンド

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ただ、ファンドにとって課題もある。ファンドは永久に企業の大株主にとどまるわけではない。運用するファンドの一定期間後、エグジット(持ち分を売却)して利益を確定しなければならない。売却時に利益を上げるには、数年程度の投資期間中に投資先の企業価値を向上させる必要があるが、人口が減少し、内需が低迷する日本では、それがなかなか容易ではない。

たとえば、カーライルが昨年11月に投資した自動車部品データベース製造販売の「ブロードリーフ」。国内市場の飽和を見越し、「今後はシステムのパッケージ販売の収益からサービスによる収益にシフトしていく。中古車部品流通システムも海外展開したい」(大山堅司社長)という。

同社への投資を担当したカーライルの川原浩ディレクターは「人口が減っていく日本が将来、二流国、三流国になるのは仕方がない。だが、今なら日本が得意技として持っているものを海外展開できる。あまり悲観していない」と語る。

地道に投資先の企業価値を向上させるという企業買収ファンドの地力が、今こそ試されている。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年7月3日号)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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