東アジア反日武装戦線を追った映画にこもる意味

なぜ彼ら彼女らは虹をかけようとしたのか

(写真:Graphs/PIXTA)
「国民の命と財産」がまさに危機に瀕したパンデミック下、無為無策に終始した為政者たちは次々と政権を放り出し、いまその筆頭者がキングメーカーを気取り、後釜に居座ろうとする者たちとまたも権力闘争にうつつを抜かしている。(中略)そうして破壊活動に邁進した為政者たちへのささやかな抵抗の記録である――。(『破壊者たちへ』序に代えてより)
闘うジャーナリストが、失意の時代を見つめ、その淵源を射抜き、新たな希望を語る。テレビやラジオのコメンテーターなどとしても活動する青木理氏が、『サンデー毎日』の連載コラムや単発の記事として寄稿した文章を1冊にまとめた時評集『破壊者たちへ』の一部を抜粋し、掲載する。

狼と虹

(『サンデー毎日』2021年5月2日号より)

東アジア反日武装戦線を追ったドキュメンタリー映画『狼をさがして』を観た。狼、大地の牙、さそりの3部隊を名乗って一連の企業爆破を引き起こし、世を慄然とさせた当事者や関係者らを直接、間接的に取材してきた私にしてみれば、驚くようなエピソードが描かれているわけではない。ただ、この映画には主に2つの点で時代的意味があるように感じられた。

まず、映画が韓国人女性の手によって制作されたという点である。監督のキム・ミレは1964年生まれ。韓国や日本の労働運動などに焦点を当てたドキュメンタリーの制作を手がけ、大阪・釜ヶ崎で日雇い労働者の取材をするうちに東アジア反日武装戦線の存在を知り、本作の撮影に取りかかったという。

あらためて記すまでもないが、かつて統治した朝鮮半島との関係を振り返るとき、戦後の日本がその罪と真摯に向き合ってきたとは思えない、というのが隣国での大方の受けとめだろうし、私も同じように考えてきた。まして日本では昨今、修正主義的な歴史観を公然と振りまく為政者たちが政権の中枢を構成している。

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