日本製電車が快走、バングラ初「都市鉄道」の全貌 交通問題解決のほか「女性の社会参画」にも期待

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MRT6号線は、ダッカ北部郊外の大規模ベッドタウンの開発が進むウッタラ(Uttara)から西部の住宅地ミルプール(Mirpur)、南西部にある富裕層が住むダンモンディ(Dhanmondi)、そしてバングラデシュの政府機関が集まる南部のモティジール(Motijheel)を経て、サイダバッド(Sayedabad)までを結ぶ全長約20km・16駅の高架路線。開業後は6両編成の電車を最短4分間隔で運転する計画だ。軌間(線路の幅)は新幹線などと同じ標準軌の1435mm。ダッカMRTは6路線の計画があり、数字としては最後の6号線が最初に開業する。

JICAの資料によると、6号線と並行する20kmの区間は道路交通だと2時間弱かかるというが、MRT運営会社のダッカ都市交通公社(DMTCL)は、今回開業する区間の所要時間は約35分になるとしている。鉄道の開業は渋滞の緩和や環境汚染対策となるだけでなく、交通の利便性が上がることによって人口過密なダッカ中心部から郊外への分散が期待できるというメリットもある。

川崎重工が製造したMRT6号線車両の車内。日本の通勤電車のようだが、通路中央にも吊り手や手すりがある(写真提供:DMTCL)

MRT6号線の車両は川崎重工業が製造し、6両編成×24編成の計144両を納入。ステンレス製の片側4ドア・ロングシートの車両で、ドア上には2つの液晶画面が取り付けられている。車内にはカメラ(CCTV)を設置し、ほかにワンマン運転の際に利用客の乗降やプラットフォームの状況が確認できる車外CCTVカメラも装備。ダッカは年間を通じて高温多湿なことから、大容量の空調装置を1両につき2台搭載している。

車両は日本の通勤電車風

車両は日本の通勤路線を走る私鉄電車のような印象を受けるデザインで、とくに側面は最近の関東地方のJRや私鉄の電車そっくりだ。これは、ダッカMRTが日本の鉄道技術とノウハウをベースとした都市鉄道の標準システム「STRASYA」に基づいているためだ。

したがって、プロジェクトでは多くの日本企業が関与している。

【ダッカMRT6号線プロジェクトに参画している主な日本企業】
・高架橋と駅舎の建設……鉄建建設(一部工区を担当)
・車両、主な車両基地設備の設計・製造など……川崎重工業
・一部車両基地設備の供給……三菱商事
・電気・信号システム敷設(CBTC)……日本信号
・自動料金収集システム(AFC)とホームドア……日本信号
・詳細設計、入札支援、施工管理など……日本工営

例えば、高架橋と駅舎の建設では鉄建建設が一部工区を担当、車両および車両基地設備は川崎重工業と三菱商事が共同受注した。

車両基地に並ぶ電車(写真提供:DMTCL)

また、日本信号は自動列車防護装置(同社製CBTC)を含む電気・信号システムのほか、自動料金収集システム(AFC)とホームドアの導入を受注。またコンサルタントの日本工営は詳細設計、入札支援、施工管理などに携わっている。

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