アパレルの大問題「グリーン敗戦」は回避できるか 「サステナビリティー対応」は待ったなしの状態
このようななか、現在アパレル企業が注視している動向として、「欧州グリーンディール政策」の「New Circular Economy Action Plan(新循環型経済行動計画)」の進捗がある。
欧州では、繊維・アパレル業界は資源消費量、炭素排出量が多くリサイクルも進んでいないため、「積極的に循環型経済への転換が必要な業界」と認定されている。
そのなかで、足元ではアパレル業界の「カーボンニュートラル」と「サーキュラーエコノミー」の実現に向け、包括的な施策や規制が検討されている。実際、先行して検討が進んでいる自動車業界向けの規制では、「2035年以降ハイブリッド車を含むガソリン車の販売が禁止」となったことは記憶に新しい。
これは、自動車メーカーにとって、今後の戦略を左右するインパクトを持つ規制である(とくに、ハイブリッド車を得意とする日本企業への打撃が大きい)。
このように、早晩、強制的に「サステナビリティー対応」が求められると予測されるアパレル業界では、企業レベルで「サステナビリティー戦略」を具体化する必要がある。
しかしながら、国内アパレル業界を見渡してみると、具体的な戦略、施策を講じている企業は限られる。最も重要な「カーボンニュートラル」においても、多くの企業が政府同様ようやく目標を掲げて、これから戦略やロードマップを考えようという段階だ。
「サステナビリティー戦略」を構築する「3つのステップ」
それでは、企業はどのように戦略を検討・策定していけばよいのだろうか? 効果的な「サステナビリティー戦略」を構築するには、大きく3つのステップで進めることが必要だ。
はじめに、「自社の環境負荷を見える化すること」である。なかでも「CO2排出量の見える化」は喫緊の課題だ。企業は、バリューチェーンの各所でCO2を排出している。
アパレル企業であれば、素材製造・加工・縫製・輸送など、ものづくりの各工程でCO2を排出しており、とくに素材から縫製に至るまでの段階で約9割のCO2を排出している。
たとえば、ケリングでは素材の製造から縫製に至るまでの過程で企業活動全体の84%のCO2を排出している。これは同社の本社から排出されるCO2の約5倍である。
製造段階で発生する製品ごとのCO2の見える化が、繊維・アパレル企業がまずは行うべき第一歩である。
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