「社長が無能でもなぜか成長する会社」3つの条件 「出社は週に1~2度」サボり癖を明かす社長も

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――従業員はご存じなんですか?

飯島:一応、「業界団体の集まりに出掛ける」とか「お客さんと会う」とか言っていますが、ある程度わかっていると思いますよ。「ああ、またか」という感じですね。

――従業員から不満の声は上がらないんですか?

飯島:内心は色々と不満があるかもしれません。でも、社長からうるさいことを言われず自分の好きなように仕事ができるし、給与水準もそこそこ良いので、表立って不満を言う社員はいません。離職率は低いですよ。

――飯島社長が関与しなくて会社の方は大丈夫ですか?

飯島:父は、社員の自主性を尊重し、自由に仕事をさせる方針でした。また教育・研修に力を入れていたので、この規模の会社(年商100億円弱)にしては管理職が育っています。管理職を中心にハツラツと仕事しており、今のところうまく回っています。

――なるほど。先代が取り組んだ人材育成が大きかったということですね。

飯島:そうですね。あと、私どもの機械業界はアジアの成長の恩恵を受けたという点もあります。ところで、今回の記事のタイトルは「無能な経営者でもうまく行く会社の条件」とかですか。

――いえ、まだタイトルは決まっていませんが、まあそんな感じです……。

飯島:はは、なかなか失礼ですね(笑) 。でも、無能というのは当たっているから反論しませんけど。

――すみません。では、その無能な経営者でもうまく行く会社の条件とは何ですか?

飯島:自分の無能さをちゃんと自覚することですかね。有能な経営者がグイグイ引っ張るのが、もちろんベストでしょう。でも、自分が無能なら、あまりしゃしゃり出ず、優秀な部下に任せたほうが良いのではないでしょうか。

無能であることを自覚する

企業が成功する条件については、これまで経営学者やコンサルタントが色々な議論をしてきました。大きく言うと、経営環境の良し悪しに着目する考え方と経営者の優劣に着目する考え方があります。もちろんベストは、GAFAMのように、良好な経営環境で、有能な経営者が強力なリーダーシップを発揮することです。

では、経営者が無能なら、どうでしょうか。最悪のケースは、悪い経営環境で、無能な経営者が強力に会社を引っ張ることです。経営者は責任感が強い人が多く、無能なのに「やっぱり俺がやらなきゃ」と張り切って不適切な舵取りをし、かえって会社を危機に陥れたりします。

逆に、もし経営環境が良好なら、飯島社長のように経営に関与しないのが得策でしょう。自分が無能であることを自覚し、経営環境を踏まえて会社と距離を置いている飯島社長は、ある意味、非常に有能な経営者と言えるかもしれません。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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