日野、EVで解消する宅配ドライバーの切実な悩み 2022年初夏に発売、荷台を低くし負担を軽減
実は、日野が宅配用の小型EVトラックの開発に取りかかったのは10年近く前のこと。2013年には超低床構造の試作車両を製作し、宅配事業者との実証実験も行った。しかし、当時はEVに対する関心自体が低く、大手宅配事業者からの反応が今一つだったため、時期尚早と商品化を見送った経緯がある。
しかし、その後、状況は大きく変わった。第一に、社会的に環境意識が高まり、運送事業者もCO2排出量削減が避けて通れなくなった。加えて、インターネット通販の普及などで荷物の量が増え、配送現場を担うドライバーの人手不足問題が深刻化。そのなり手を増やすため、運送業界は少しでもドライバーの負荷を減らして労働環境を改善する必要に迫られている。
現場を調べ尽くして再設計
そうした時代の変化を受け、日野は2019年に宅配用の小型EVトラックのプロジェクトを再始動。2013年当時の設計をいったん白紙化したうえで、技術者が宅配トラックに連日同乗してドライバーの実際の作業を分析したほか、生の声を数多くヒアリングするなど、現場のニーズを徹底的に再調査。その結果を踏まえて、どんな宅配トラックにすべきかを議論し、新たにウォークスルー構造も採用した車両を設計した。
大きなエンジンや燃料タンクなどを積む従来のエンジン車では、今回のような超低床車両の実現は難しかった。その点、EVは設計の自由度が増す。
日野は専用のシャーシフレームを一から開発。モーターなど主要な電動コンポーネントは運転席下に配置し、トラックでは珍しい前輪駆動にすることで、荷台下の大きなプロペラシャフトなどをなくし、超低床化を実現した。荷台下には電池がフレームに包まれる形でコンパクトに収納されている。
ちなみに、モーターや電池、インバーターなど、主要な電動関連部品は社外から調達したものを使っている。ただ、このサイズのEVトラック自体が世の中に存在しないため、部品の手配には苦労したという。
「例えば、3.5トンの車を動かすモーターはあるにはあったが、乗用車用でトラックに必要な耐久性を備えていなかった。最終的には、モーター、電池など多くの部品をサプライヤーに一から専用設計してもらった」(東野氏)
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