大注目の「イベルメクチン」効果はどれほどなのか 「家畜の寄生虫退治薬」に希望者が殺到している

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コロナ禍で脚光を浴びている「イベルメクチン」の処方件数が急増している(写真:Isadora Kosofsky/The New York Times)

テキサス州サンアントニオの救急医グレゴリー・ユー氏はこの1週間、患者から毎日、同じ要望を受けている。新型コロナワクチンの接種を済ませた患者と済ませていない患者の両方から「イベルメクチンを処方してもらえないか」と頼まれるようになっているのだ。だが、イベルメクチンは通常、寄生虫病の治療に使われる薬だ。新型コロナウイルス感染症の予防・治療効果を確かめる臨床試験(治験)は繰り返し失敗に終わっている。

ユー氏は患者の求めに応じていないが、そうでない同僚もいるという。アメリカ疾病対策センター(CDC)の研究員らによると、イベルメクチンの処方件数はここ数週間で急増。パンデミック前は週平均3600件が平常レベルだったが、8月中旬には週8万8000件を超える水準に跳ね上がった。

一般的には動物に処方することが多い

薬剤師からは在庫不足を指摘する声も上がるようになっている。人口約2万人のアイダホ州クナの薬剤師トラヴィス・ウォルソール氏によると、例年は2〜3件にすぎなかったイベルメクチンの処方が、今年はすでに20件を超えたという。ここ1週間は通常の取引先からイベルメクチンを仕入れることもできなくなった。在庫が底をついたためだ。

新型コロナ感染症について未承認の薬を服用しようとする人の多さに、ウォルソール氏は衝撃を受けたと話す。「これは恐ろしいことになったぞ、という感じです」。

イベルメクチンはアタマジラミや疥癬(かいせん)という皮膚の感染症を引き起こす寄生虫を駆除する目的で人間に少量投与される場合もある。が、一般には動物に使用されることの多い薬だ。

そのため、動物用医薬品の流通ルートからイベルメクチンを入手する人が増えており、こうした状況に医師たちは警鐘を鳴らしている。家畜向けに供給されているイベルメクチンは高濃度のペースト状か液状になっている可能性があるためだ。

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