大注目の「イベルメクチン」効果はどれほどなのか

「家畜の寄生虫退治薬」に希望者が殺到している

新型コロナに対する有効性は証明されていないが、人々は今、イベルメクチンに殺到し、フェイスブックや投稿サイトのレディットでは入手方法に関する情報が飛び交うようになっている。医師たちの中には、この現象を抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」に対する関心が高まった昨年の状況になぞらえる向きもある。ただ、イベルメクチンについて行われている治験はヒドロキシクロロキンより多い。

「あなたは馬ではない」。アメリカ食品医薬品局(FDA)は8月下旬、こうツイートし、新型コロナの治療や予防についてFDAはイベルメクチンを承認していないと説明。大量に摂取すると深刻な健康被害につながるおそれがあると警告した。

イベルメクチンで「予防する」危険

合計1600人以上が参加した14件の治験を精査した最近の研究は、次のように結論づけている。新型コロナ感染症の予防、症状の改善、死亡率の低下のいずれにおいても、イベルメクチンの有効性を示すエビデンス(科学的証拠)はなかった——。

1300人以上の患者が登録し、新型コロナ感染症の治療効果を確かめる目的で行われた最大規模の治験の1つは、データ安全性モニタリング委員会の判断で8月6日に中止されている。入院や緊急治療室での治療の長期化を防ぐ効果において、プラセボ(偽薬)との違いが確認できなかったためだ。

同治験を率いたマクマスター大学のエドワード・ミルズ教授は、イベルメクチンに対する世の中の関心がここまで高くなければ、もっと早い段階で治験を止めていただろう、と話す。

研究者や医師らがとくに不安を募らせているのは、効果の高いワクチンを接種せずに、イベルメクチンを予防や治療に使おうとしている人々だ。FDAは8月下旬、ファイザーとビオンテックが共同開発したワクチンを正式に承認。モデルナのワクチンも近く正式承認される見通しになっている。

「新型コロナの制御に向けて唯一機能している戦略はワクチンだ」と、コロンビア大学の全米災害予防センターで創設所長を務めるアーウィン・レッドレナー医師は指摘する。「ネット上のでたらめのせいで人々がワクチンを接種しなくなれば、このパンデミックを抑え込むわれわれの能力が損なわれることになる」。

(執筆:Emma Goldberg記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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