白血病治療と娘の中学受験が重なった母の大奮闘 必要なのは家庭教師ではなく「コンサルタント」

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5つの学校に願書を出していたが、心から進学を希望していた学校は2校だった。長女は、そのうちの1校に合格することができた。中学受験をやり抜いた娘と私は、すがすがしい気持ちで満たされた。そして、縁あった学校で新たな生活をスタートできることを、喜び合った。

受験で奇跡は起きないが、幸運と、たくましさを手に入れた

ただでさえ山あり谷ありの中学受験なのに、私の入院のおかげで長女が経験した谷は、普通の谷の2倍も3倍も深くなってしまった。母が大病を患い、不安な気持ちに襲われながら塾に通った長女。とても、心細かったことだろう。

でも、母親不在の中学受験は、悪いことだけではなかったとも思う。

母親不在の9カ月の間に長女が取得したスキルとして、テキスト、プリントやテスト等の整理整頓がある。このスキルは、中学に入ってからも大いに活用されている。

朝勉する習慣が、身についたのもよかった。寒いなかまだ誰も起きていないのに、子どもひとりで起きて、勉強をするのはなかなか容易なことではないだろう。でもこの朝勉の習慣化のおかげで、中学生になってからも母親の私よりも早くに起きて勉強をしている。私はお弁当をつくるために適当なタイミングに起きてきて、お弁当と朝食の準備をするだけの毎日を送っている。

中学受験は私にとって、とてもストレスフルなものだったが、実は悪いばかりのものでもなかった。娘の一大事は、治療を終わらすための大きなモチベーションになった。自分のためよりも、子どものためのほうが母親は力が出るものだ。何が何でも退院して、中学受験のためのサポートをしてやろうと心に炎が灯った。

病院の会議室で長女を叱咤激励した際には、お腹から声を出して指導していた(要するに、かなり大きな声を出していた……)。声楽は身体にいいというが、お腹から声を出すことできっと私は体幹トレーニングができていたと思う。運動不足で筋力低下が著しかったあの時期、体幹トレーニングができたのは私にとっては確実にプラスであった。

でも、様子を見に来た看護師さんは驚いていたと思う。

点滴をしている患者が、子どもの勉強に髪を振り乱しているなんて(実際には抗がん剤の影響で髪は抜け落ちてなかったが)、普通じゃない光景だったろう。

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