ところが、喜んで入学したのもつかの間、中学1年生の最初の試験で学年ビリに近い成績を取ってしまいました。小学校ではつねに上位3位以内をキープしていたので、大きな精神的ショックを受けました。それで激怒した両親に家庭教師を付けられて、受験勉強中と同じく勉強漬けの生活がずっと続くようになりました。
受験をきっかけに性格が歪み…
それでも、中学・高校の6年間にわたって成績は底辺のままで、鬱屈とした思春期が続きました。本人が言うには、それで性格が歪み親子関係も悪化したそうです。その後は、両親から離れたい一心で、反対を押し切って強引に地方の大学に進学しました。同じ高校の出身者がいないところに行きたかったというのもあったそうです。
この他にも、子どもが勉強しないことに腹を立てた親が、子どもが読んでいた雑誌を取りあげて投げつけたという話も聞いたことがあります。その人は、「子どもにこういうことをしたのは初めてです」と言ってしょげていました。
また、別のある親は、子どもが勉強しないのにキレて、勉強道具をゴミ箱に棄ててしまったそうです。
こういう話を聞いて、私があらためて感じたのは、中学受験で無理をすることの弊害がいかに大きいかということです。こういう話は氷山のほんの一角であり、実は、家庭という密室の中で多くの親子が似たような状況になっていることが考えられます。事件にならないとメディアが報道することはありませんが、将来の大きな事件の元になりかねない親子の確執が、密かに生み出されているのです。
そもそも、10歳ちょっと過ぎたくらいのこの年代の子どもたちにとって、毎日長時間の勉強をやり続けるというのは不自然なことです。発達段階から見ても、この年代は、毎日楽しく遊びまくる、時間を忘れて自分がやりたいことに没頭する、そういった黄金の少年・少女時代の最後の時期なのです。
やりたいことをやる時間がほとんどなく、毎日難しい勉強をやらされる、やらないと叱られる……。この年代の子どもたちにとって、こういう毎日がどれほど苦痛なことでしょうか。
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