地政学リスクより、米長期金利上昇圧力が焦点 8月は下振れか底ばい、国内株本格上昇は9月から
でが何が要因なのか。筆者は、米長期金利上昇圧力こそが、「本尊」と見込んでいる。特に米国株が下落基調に突入したきっかけは、7月30日に発表された4~6月のGDP統計が予想以上に強く、早期利上げ思惑が生じて長期金利が上昇したことであった。その後、米長期金利は落ち着いているが、これは「米長期金利上昇→米株下落→株価が下がったので、長期金利は元の位置まで低下→米長期金利上昇→米株下落→株価が下がったので、長期金利は元の位置まで低下」という流れを繰り返しているからである。
別の言い方をすれば、米株価が下げ続けているにもかかわらず(本来はそうであれば長期金利も下げ続けるはずなのに)、長期金利がそれほど低下していない、と捉えられる。すなわち、米長期金利の底流での上昇圧力が根強いのだ。
なぜ米長期金利の上昇圧力が強まっているかと言えば、現在の長期金利の居所が低すぎるからだ。今の米国経済の成長力などを分析すると、現在のような2.5%前後の10年国債利回りが妥当だ、との主張もあるが、経済統計との相関を取ると、もっと高い水準の長期金利が適切だ、との分析もできる。ただ、そうした詳細なデータ分析を行なっても微に入り細を穿つことになりかねないので、全体感を大きく見てみよう。
世界を大きく巻き込んだ、リーマンショック直後、米10年国債利回りは、一時2.125%近辺まで低下した。ただしそうした低水準はそれほど長く続かず、2.5%以下で推移した期間は短い。ところが現在の10年国債利回りは、一時のような1.5%割れという超低水準ではないが、リーマンショック直後並みの2.5%前後で推移している。リーマンショック直後と現在の経済環境が格段に異なることを踏まえれば、現在の長期金利は異常に低い水準にある。
したがって、特に強い経済指標が出なくても、何かあれば、長期金利は跳ね上がりたいところだと考えている。ただし、述べたように、これは現在の長期金利が低すぎるからであって、仮に10年国債利回りが3.0%や3.5%に上昇したとしても、それは金利の正常化に過ぎない。また、金利上昇の理由は、米国経済が良いからであって、それは米株の買い材料だ。これを踏まえると、中長期的には、米国株は、長期金利の上ぶれを跳ね返して上昇しうる。ただし短期的には、金利の上振れが、さらなる米国株の下落を引き起こし、それが日本株の下振れ材料にもなりうると懸念する。
国内株価が上昇基調に戻るのは9月
前述のように、内外経済実態の改善に沿った、中長期的な国内株高基調を見込んでよいと考えているが、8月は株安、円高のリスクが高いとみる(深刻な動きではなく、短期的な株安・円高ないし小休止)。8月の相場が冴えないが9月以降は期待できると考えている要因は、以下の通りだ。
まず、第1点として、政策からの支援材料不足である。国会は開かれておらず(次の臨時国会は9月29日頃)、9月上旬とみられる内閣改造・党人事を前に、8月中は政策は動きづらい。
しかし9月に入れば、新内閣で「地方創生国会」に取り組むと期待され、10月26日投開票の福島知事選、11月の沖縄知事選、来年の消費増税の判断時期とも言われる12月を控えて(7~9月のGDP統計発表は11月17日、法人企業統計の発表は12月1日、有識者による景気集中点検会合は11月後半?)、経済政策に力を入れざるを得ない。
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