ジャクソンホール会議は無風と思う人の落とし穴 いつまでも「アメリカ株の上昇」は続かない
では今回の局面でも、長期金利の上昇はやはりテーパリングの開始が決定されるまで「早ければ9月のFOMCまで」ということになるのだろうか。短期的に見れば、その可能性は高いかもしれない。テーパリングの開始が景気回復の足枷となり、それに伴って物価上昇圧力が鈍ってくるとの見方が強まるなら、長期金利も自然と低下に転じることになるのではないか。
2013年時よりもインフレ圧力はかなり強い
株式市場の反応はどうだろうか。前回のテーパリング局面では、最初のバーナンキ発言を含め、何らかの動きがあった際にはそれなりの価格調整が見られた。だがすべて一時的なものにとどまり、その後は利上げに転じた後もしっかり上昇基調を維持する格好となった。こうした動きを見る限り「テーパリング恐れるに足らず」と言ってもよいのかもしれないが、果たして今回も同様に上昇基調を維持することができるのであろうか。
今回と前回の大きな違いは、やはりインフレ圧力の高まりだ。前回のバーナンキ発言のあった直前である2013年4月の消費者物価指数(CPI)は前年比で1.14%の上昇にとどまっていた。また、FRBが重視しているとされる個人消費価格指数(PCE)は1.08%の上昇だった。
その後もCPI、PCE共に安定的に推移、次にFRBの目標とされている前年比で2%という水準を超えたのは、CPIが2016年12月、PCEが2018年3月だった。テーパリング開始後も株価が上昇を続けたのは、テーパリングの影響が見られなかったというよりも、物価が安定して推移し長期金利も低い水準にとどまったことが、大きかったと思われる。
翻って今回の局面では、7月のCPIは前年比で5.28%まで上昇、PCEは6月時点で前年比3.99%という、非常に高い水準となっている。市場がこうしたインフレ圧力の高まりを無視し、前回同様にテーパリングの開始後も上昇基調を維持し続けるのかは、非常に微妙だと言わざるをえない。
また前回については、前述のようにまだ物価が低い水準で安定していたにもかかわらず、バーナンキ議長が唐突にテーパリングの話を持ち出したことも無視すべきではない。
確かに市場にとってはまさに晴天の霹靂、金融政策の引き締め転換に関してはまったく無防備であっただけに、「テーパー・タントラム」といわれたほどの混乱が生じたのも当然と言えば当然の結果だろう。しかしながら、そういう状況下での突然の発言だっただけに、FRB内でもまったく準備は整っておらず、結局、実際テーパリングの方針を決定したのは同年の12月であった。「バーナンキ発言」に混乱はしたものの、その後市場がテーパリングを織り込む時間は十分にあったわけで、結果的に見れば上昇基調を維持するのにはプラスに作用したのかもしれない。
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