「孤立する人を生まない組織」こそ幸せになれる訳 生産性に影響が大きく、マネジメントで改善可能

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反対に、幸せでない集団では、特定の人が、独占的に多くの人とビデオ会議や電話で会話しており、しかも、時間的にも会議などの場に偏っている(たとえば毎週1時間の定例会議などのみで、それ以外の日には会話がない)。会議ではメンバーが互いに身体運動を同調させなかったり、それを相手に見えやすくする工夫を怠っていたりするために、不信感が言葉を超えて表れ、しかも、特定の人のみに発言権が偏っており、他の人は沈黙しているのである。

意識すべきは、リモートワークの環境下では、このFINEの4条件を自然に満たすことがより難しくなることである。だからこそ、われわれは意識的に工夫する必要がある。仮に制約があってもできることはあるからである。よく考えると、この4つとも、リモートワークの中でも工夫すれば実現可能である。それを意識して行うかどうかにかかっている。

上司と部下の会話だけでは効果的ではない

おそらくリモートワークでも多くの場合、上司と部下の会話は行われているであろう。意識的で計画的なコミュニケーションは可能である。たとえば、議題が明確な会議は可能だ。

しかし、それだけではだめである。部下と部下のいろいろな組み合わせで、5分程度の短い相談や確認や雑談があったほうがよい。しかも、遠慮せずに発言しあうことだ。このことをマネジャーがメンバーに推奨し、職場のメンバーが認識し、日々実行するだけでも大きな変化が期待できる。

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より効果的なのは、いろいろな人の組み合わせで仕事を割り当てることである。職場では、共同して進める仕事がないのに、つながるのは難しい。だから、一緒に仕事をするつながりが固定化することは、リモートワーク環境下では幸せと生産性を下げる危険がある。意識して、人と人との組合せを流動化することが重要なのだ。

しかし、ともすればマネジャーは、仕事が進み始めると、仕事を安定させるために、既存の人の役割と人との関係性をそのままにしておきたくなる。リモートワークのときには、意識して別の組み合わある。職場には、いろいろな雑務を含めた活動やタスクが発生する。それを、従来とは異なる組み合わせのペアや3人組に割り当てることが大変重要である。

そして、テレビ会議や電話でも、相手を想像して、身体を同調させることである。電話での会話で「うなずく」ことをおかしいと思うかもしれない。とんでもない。それこそが、相手を想像し、身体を同調させるという幸せの重要な条件である。テレビ会議では、少し大げさなぐらいに大いに行うのが望ましい。それも、よく見えるように工夫したほうがいいのである。

矢野 和男 日立製作所フェロー、ハピネスプラネット代表取締役CEO

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やの かずお / Kazuo Yano

2004年から実社会のデータ解析を先行。論文被引用件数は4500件、特許出願350件を越える。『ハーバードビジネスレビュー』にて、開発したウエアラブルセンサが「歴史に残るウエアラブルデバイス」として紹介される。開発した多目的AI「H」は、物流、金融、流通、鉄道などの幅広い分野に適用され、産業分野へのAI活用を牽引した。2020年に「ハピネスプラネット」を設立し、代表取締役CEOに就任。博士(工学)。IEEE Fellow。電子情報通信学会、応用物理学会、日本物理学会、人工知能学会会員。東京工業大学情報理工学院特定教授。国際的な賞を多数受賞。著書に『データの見えざる手』『予測不能の時代』(草思社)など。

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