「孤立する人を生まない組織」こそ幸せになれる訳 生産性に影響が大きく、マネジメントで改善可能
さらに、日ごとに働いている人は入れ替わっていた。したがって、出勤している従業員が、たまたま能力の高い人が多いときに、受注率が高くなると考えられた。ところが、個人のパフォーマンスデータ(過去の受注実績)を確認してみると、驚くべきことがわかった。高パフォーマンスの人が多い日に、センター全体の受注率が高いということはまったく見られなかったのである。
電話での営業には、性格的な向き不向きがあると思われた。そこで、オペレーターのパーソナリティー(性格)の調査も行った。しかし、このパーソナリティーと受注率との間にも相関はなかった。
「孤立」がパフォーマンスを損なう要因だった
意外なことに、受注のパフォーマンスを損なっていたのは、「孤立」だった。名札型ウェアラブル端末で収集した面会のデータから、そのことが判明したのである。
孤立が発生するとき、組織内の人がどんな状況に置かれるかを描いてみよう。まず、組織の中で、他の誰かが独占的に人とのつながりや影響力を持っており、その結果、自分には人とのつながりの数や他の人への影響力が、相対的に少なくなる。このため、組織の中で相対的に情報の獲得も少なくなりがちである。
加えて、必要があっても、質問しにくい、あるいは話しかけにくい雰囲気で、正式にスケジュールされた会議のとき以外には会話がしにくい。会議で発言しても、まわりの人たちはうなずいたり、関心を示したりして、タイミングよく反応するわけでもなく、むしろ、自分の元気を奪うような反応しかしてくれない。しかも、会議においても、発言権は、他の誰かに占有されており、自分からは話しにくい状況である。これが孤立した人の置かれる典型的な状況である。
ここで認識しておくべきことがある。孤立とは、人との接点がないことではない。人が孤立を最も感じるのは、むしろ人と一緒にいるときなのである。人と一緒なのに、自分に関心を持たれず、応援されず、信頼されず、元気を奪われるような反応ばかり受けることによってわれわれは孤立を感じる。まわりに関わる人が多ければ多いほど、このような反応を感じたときの孤立は深まる。そのような状況ならば、「いっそ1人きりでいたほうがまし」と思えるのが孤立なのだ。その結果、本当に1人きりの状態に自らを追い込むことにもなりがちなのである。
さらに重要なことは、この孤立した人、その個人のパフォーマンスが低くなるだけではなく、孤立した人が多い日には孤立していない人のパフォーマンスも低くなる点である。このコールセンターの例では、データが明確にこれを示していた。孤立した人がいるような状況では、全員のパフォーマンスが低下するのである。まさに、孤立とは「組織の病」なのである。コールセンターのように一見、個人プレーの業務でも、人は無意識のうちに、職場の雰囲気に強い影響を受けていたのだ。しかも、それは受注率という数字に明確に出ていた。
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