コロナで露わ「対応が後手後手」な日本の根本弱点 池上彰が語る日本にはびこる悪しき体質とは?

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今後、日本はどう進むべきか。新型コロナウイルスの感染拡大はいみじくも日本の弱点を浮き彫りにしました。

このグローバル化の時代、中国抜きに日本経済は成り立たないでしょう。しかし、日本にとって命綱になるもの、例えば今回でいえば、医療従事者が感染を防ぐために身につける医療用マスクや手袋、医療用防護服、こういうものを中国に依存しすぎていたがゆえに大きな問題になりました。

たとえコストはかさんでも、医療に必須の装備は国産にしておかなくてはいけません。

安全保障に必須のものは他国に頼らない

これからも中国との経済活動は切っても切り離せないところはありますが、安全保障に必須のものに関しては他国に頼らないことが大事なのです。その場合の安全保障というのは単に軍事的なことだけではありません。食料はもちろんのこと、衛生、健康に関しては、国内生産に回帰していくことが必要になってきます。

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東京電力の福島第一原子力発電所に使われていたのはアメリカのGE社製の原子炉でした。まだ福島第一原発がつくられた段階では、日本に原子炉をつくるだけの技術がなかったのです。アメリカは日本ほど地震がありません。津波がくることも少ないです。

もし、日本が独自に原子力発電所の技術を持ち、まったくの国産としてつくられていたなら、津波対策も当然考えていたでしょう。自家発電装置を地下に設置すること自体、避けられたかもしれません。

さまざまな技術も、海外から来たものをそのまま導入するのは大変危険なことではないか。福島の事故はそれを私たちに教えてくれました。

日本はつねに、アメリカにつくのか、中国につくのかという言い方をします。所与の条件が最初にあって、「どっちにつく?」という考え方をする。米中のはざまで「どっちにつくか」ではなく、日本としてどうしたいのか。世界のパワーバランスが変わる中で、それを考えなければならないのです。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶應義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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