コロナで露わ「対応が後手後手」な日本の根本弱点 池上彰が語る日本にはびこる悪しき体質とは?

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コロナ禍は、遅れに遅れていた日本のデジタル化の惨状もあらわにしました。後れを挽回しようと2021年9月にデジタル庁を新設しますが、今回、日本はここまで遅れていたのか、とびっくりしたニュースがありました。

新型コロナウイルスは指定感染症(現在は新型インフルエンザ等感染症)なので、診察した医師は、コロナの陽性患者を見つけたら、すぐに地域の保健所に届けなければなりません。毎日「今日、新たに確認された感染者は○人です」とニュースで知ることができるのはそのためです。

その「発生届」というのがあるのですが、A4の紙1枚に質問項目が19あり、それに一つひとつ手書きで記入しFAXで送っていたのです。ただでさえ患者を診るので忙しい医師が、そんなことまでやらなければならない。

発端となったのは最前線で新型コロナと対峙する医師のつぶやきでした。「もう止めようよ…。手書きの発生届…(中略)こんなん昭和ですよ…」という悲愴感漂うツイート。さすがに大問題になり、その後はオンラインで報告すればいいことになりました。

機能しなかったマイナンバー

アメリカのニューヨーク・タイムズは「日本社会やっとFAXさようなら」などと揶揄しました。1人あたり10万円が支給される「特別定額給付金」の申請も、マイナンバーカードでオンライン申請できるというのでカードで申請すると、オンライン不備続出で郵送申請のほうが早い、なんてことになってしまいました。

マイナンバーが何のためにみんなに割り振られたのでしょうか。日本とは、こんな後進国だったのかと愕然としました。

実は安倍内閣時の2013年、「日本を2020年には世界最先端IT国家に」と宣言していました。ところがその2020年、在宅勤務が推奨されたにもかかわらず、危険を冒して出勤しなければならない人たちの中に、街頭インタビューで「書類にはんこをもらいに行くんです」と答える人が続出したではありませんか。

政府がデジタル化を推進する中、IT担当大臣は、日本のはんこ文化を守ることを目指す「はんこ議員連盟」の会長だったというのですから笑い話です。「世界最先端IT国家に」というのは、掛け声だけだったということがわかりました。

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