都心で進む「ウォーキングロード計画」の中身 廃線から30年、晴海橋梁が生まれ変わる?
また、浜離宮の南に位置する竹芝・浜松町では、東急不動産と鹿島建設が浜松町駅~竹芝駅(ゆりかもめ)~竹芝埠頭を結ぶ「ペデストリアンデッキ」(歩行者デッキ)の供用が開始された。
これは都有地活用事業「都市再生ステップアップ・プロジェクト」の目玉事業のひとつで、国家戦略特区の特定事業(都市計画法等の特例)に認定されたものだ。ここは「ウォーターフロントの再生」を掲げ、海や竹芝埠頭、旧芝離宮恩賜庭園などの公共空間を活用して、地域のにぎわいを作る活動を進めるのだという。
お手本はニューヨークの「ハイライン」
旧築地市場の水際から銀座方面はどうだろうか。
KK線の廃線後、鉄道の廃線跡を利用したニューヨークの「ハイライン」をお手本にした遊歩道の計画の話は「1964-2020東京五輪へと続く道路開発2」で説明した通りだ。
都は、KK線の再生・活用を「東京の新たな価値や魅力を創出」「歩行者中心の公共的空間として再生」「車中心から人中心への転換で人とみどりが共存・共栄するグリーンインフラ」などと位置付けている。しかし、これは後講釈だろう。こうした理念や理想を実現するには、都のいう「かつての川の記憶を継承した水の潤いを感じられる空間」の整備ができるかどうかもポイントになる。
KK線の遊歩道としての再開発、浜離宮周辺、旧築地市場の再開発は1964年に計画された“幻の地下高速”とも無関係ではない。首都高速道路というインフラ整備の延長線上にこれらの計画があるといえるからだ。
1980年代の日本は土建国家といわれた。この当時はものすごい勢いで自然を破壊し、都心はもちろん地方都市もコンクリートで固めたハコモノや道路をつくってきた。そんな日本でも自然を復元して戻す自然再生事業の流れが生まれつつある。
例えば、河川では流れを直線化した改修事業や、コンクリートで固めた護岸や堤防の見直しが行われ、昔の「自然」の状態に近い形で壊したものを再生する事業も進められている。
しかし、こうした再生事業は思いのほか巨額な予算が必要で、少子高齢が進む自治体では予算不足が再生事業の壁となっている。加えて国土強靭化政策の推進によって、自然再生事業は衰えたままだ。
こうした都心の老朽インフラの再利用をきっかけに「つくっては壊す」から「つくったものは再利用する」という流れにどこまで変わるのか、令和ニッポンの大きな課題がそこにありそうだ。
(取材・文:立木 信)
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