中国「時速600kmリニア」気になる本当の開発状況 車両は完成しているが、まだ高速試験線がない
今回、車両お披露目のステージまでたどり着いたものの、気になる高速走行試験の進捗はどうなっているのだろうか。
中国のリニア開発の歴史を改めておさらいしてみよう。
2018年…… 1月、高速リニア実用化に向けた技術計画の実施が採択
2019年…… 5月、一連のコア技術が盛り込まれた高速リニアのテストプロトタイプ、組立ラインからロールオフ
2020年…… 6月、試験車が上海・同済大学キャンパスに設けられた試験線を走行
現地の報道によると、「高温超伝導高速リニアの技術は基本的に成熟している」とされる。次のフェーズでは、「長距離試験線」を設けねばならない。設計最高時速600kmとはいうものの、今のところ時速600kmでの走行試験はできていないためだ。その後、信号や地上システムを統合した検証を重ね、商業化に向けた最終試験まで漕ぎつける必要がある。
気になる「長距離試験線」完成までのタイムラインだが、四川省成都市にある西南交通大学の何川副学長によると「国の支援を受けたうえで」という前提で「2、3年で完成するかもしれないが、5、6年はかかるだろう」との見方を示している。
試験線の距離だが、日本では1980年代後半に「高速走行試験の実施には全長40kmは必要」との観点から、建設場所の検討を進めた経緯があった。同様に、中国でも仮に時速600kmまで到達させるには試験線の全長は50km以上は必要となるとみられる。
すでにリニア誘致合戦か
「高速リニア交通システム」は試験線の完成時期がまだ決まらないという状況にあるが、すでに多くの地方が高速リニアの敷設誘致を進めている。中国政府がリニア導入の具体的な検討を進めており、建設の可能性が高いルートとしては、上海―杭州間、広州―深圳間の2つがある。
そのほか、現地での導入誘致などの活動が進んでいる区間としては次のようなものがある。
・北京―上海間
・昆明―麗江(ともに雲南省)間
・上海―杭州(浙江省)間
膨張すると予測される建設コストも実用化に向けての大きな課題となる。現地のシンクタンクである前瞻産業研究院の検討によると、高速鉄道の1km当たりの平均建設コストは約1億5000万元(約25億円)だが、中低速リニアだと約2億元(約34億円)、時速400km以上の走行を実現する超伝導リニアの場合、約2億5000万元(約42億円)を超えるとみられる。
中国ではリニアの導入で、上海や広州を中心とした都市圏の拡大を実現したい考えだが、すでに高速鉄道網は全土に広がっている。時速300kmでの営業運転を実現している今、そうした計画ははたして現実的なのだろうか。
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