売れ筋アイスに「誕生40年超」のベテランが多い訳 ブランドへの安心感と絶えざる進化で人気を蓄積

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実は、かつてのアイスは「子どもの食べ物」で、その多くは駄菓子屋で買われていた。

一定以上の年代には、通っていた小学校近くに駄菓子屋があり、アイスを買った思い出が残っていると思う。コロナ以前の地方取材では別々の機会に、「子どもの頃からパピコが好き」(東北地方の50代男性)、「コンビニでは新商品には見向きもせずチョコモナカジャンボを買う」(近畿地方の50代男性)という声を聞いた。

永遠の小学生「ガリガリ君」だが、“大人味”も展開されている(写真:赤城乳業)

絶えざる進化で「ブランドの鮮度を保つ」

食文化の視点から日本の消費者の嗜好と向き合うと、「高度成長期に定着した飲食は強い」と感じる。昭和30年代以降、高度経済成長に伴い食生活も変わった。現在私たちが日常的に楽しんでいる飲食は、この時代に定着したものが多いからだ。

外食でいえば、ファミリーレストラン「すかいらーく」(開業時はスカイラーク)が誕生したのは、大阪で万国博覧会が開催された1970(昭和45)年。翌年には「ロイヤルホスト」が誕生した。「マクドナルド」が東京・銀座に1号店を開いたのも、同じ1971年だ。

アイスのアラフォーブランドは、昭和40年代、50年代に誕生しており、こうした洋風化の流れとも結びつく。だが“歴史”にあぐらをかくと淘汰される時代だ。

メーカー各社の商品開発の努力も見逃せない。時には失敗もするが、絶えざる進化で舌の肥えた現代人と向き合う。あるメーカーは「消費者の期待を裏切らないよう、改良の際は薄板を1枚1枚はがすような思いで味を微調整する」と話した。各ブランドのマニアの中には、製造工場を変えると“微妙な味の変化”に気づく人もいるという。

ロングセラー商品は、「消費者とともに年を取る」とも言われるが、新商品や改良品を出し続けて、それが支持されれば「ブランドの鮮度を保てる」。ベテランが腕を磨き続けて君臨するアイス市場の構図――はしばらく続きそうだ。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

 

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