日経平均株価が3万円回復に苦戦する2つの理由 これから再浮上するための重要なカギは何か

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欧米株に後れを取り、日経平均が3万円を回復できない重要な理由としては、やはり日本の内需に対する強い懸念があるだろう。そこで内需の苦境を浮き彫りにする指標として経済産業省が公表する第3次産業活動指数に注目したい。5月の活動指数は前月比マイナス2.7%であった。2015年を100とする指数は95.3へと落ち込み、2020年1月をマイナス6.7%も下回る水準に沈んだ。

度重なる緊急事態宣言の発出、まん延防止等重点措置の長期化を受けて飲食、旅行、レクリエーション(スポーツ、音楽など)の苦境が改めて示された形だ。先行きについても、東京都における緊急事態宣言の発出によって早期の回復は見込みにくい。むしろ政府からの補償が十分でない業態(主に小規模飲食店以外)が支出を一段とカットすることで、経済全体を蝕んでいく展開が懸念される状況にある。

サービス業PMIが示す米中欧と日本の格差

こうした内需の弱さはアメリカ、欧州、中国と比較することでその深刻度合いがはっきりと浮かび上がる。

各国の内需を反映するサービス業PMI(購買担当者景気指数)に目を向けると、グローバル(主に米中欧)がパンデミック発生前の水準を大幅に上回り、お祭り騒ぎとも言うべき水準に到達しているのに対し、日本は好不況の分かれ目の目安となる50すら回復できず、コロナパンデミックで発生した断層は全く埋まっていない。この格差こそが日本株の相対劣後を綺麗に説明していると筆者は考える。

これまで日本株を牽引してきたのは半導体を中心とするIT関連財であったが、それらの銘柄が多く含まれる東証電気機器セクターの予想PER(株価収益率)はパンデミック発生前よりも高く、すでに業績拡大期待が織り込まれている状態にあり、ここから株価指数の牽引役として大きな期待はしにくい。

となると、今後日経平均が3万円を回復するには内需関連の回復が極めて重要になってくるのだが、現在のところ回復期待は萎んだままである。今後、投資家の期待が膨らむには個人消費を直接刺激する大胆な景気対策が肝となるが、その実現にはワクチン接種が進展し、コロナ感染状況が安定化するのを待つ必要がある。ワクチン接種率の上昇が日本株再浮上のポイントになりそうだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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