ヤリスは、そういう欧州において、数多くの競合車と真っ向勝負する1台として当初から欧州志向の仕様であった。国内では「ヴィッツ」の名で販売されたが、国内で競合する当時の日産「マーチ」やホンダ「ロゴ」(フィットの前身)と比べても、走行性能の高さが売りであった。欧州向けには、ヤリスにもディーゼル車があった。そのディーゼルエンジンは、BMW「MINI」にも採用されていた。欧州におけるヤリスの重要性は、トヨタが2017年から参戦している世界ラリー選手権(WRC)においてヤリスを選んでいることでも理解できる。
したがって、欧州へも小型ハッチバック車のハイブリッド車を投入するに際し、ヤリスであることが大切だったといえる。そこで5ナンバー小型ハッチバック車のHVは、国内とアメリカはアクア(アメリカではプリウスC)、欧州はヤリスという図式となったのだ。
コンパクト初のTNGA採用で走りのよさが光ったヤリス
現行ヤリスは、ヴィッツとしての4代目にあたり、これを機に国内でもヤリスの名で販売されることになった。ヤリスは、5ナンバーハッチバック車として初のTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)採用車種であり、その第1弾となる。TNGAとは、基本性能をあらかじめ十分に高め、それを展開する他の車種にも応用しながら、車種個別には十分な魅力を発揮できるよう投資を行う開発手法である。
まず現行プリウスからTNGAは採用され、それを応用した「C-HR」で花開いている。続いて「カムリ」で中型車用として準備され、それが「RAV4」や「ハリアー」に適用されて、いずれも好調な販売につながっている。そして今度はヤリスであり、それが「ヤリスクロス」につながり、そして新型アクアでも適用されている。
5ナンバーの小型ハッチバック車としてのTNGAの成果は、ヤリスで存分に発揮された。群を抜いた操縦安定性は、背の高いヤリスクロスでも活かされ、目線が高いにもかかわらず、あたかも小型ハッチバック車のような壮快な運転感覚をもたらす。
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